もう1つ、この一瞬の表情がこれほど大きな争点になった理由には、「ピーク・エンド効果」も関わっていそうだ。
人は一連の出来事を振り返るとき、その全体の印象を、感情が最も高まった瞬間(ピーク)と、最後の瞬間(エンド)の記憶だけで判断してしまう傾向がある(※4)。今回の動画は、まさに「グループとしての最後の瞬間」そのものであり、そこに映った表情は、ファンにとってWEST.というグループの何年もの記憶を象徴する“最後の1枚”になってしまう。
だからこそ、他のどんな場面よりも、この数秒の表情に感情的な意味づけが集中したと考えられる。
“正解”のない表情に、私たちは何を見ているのか
重岡の笑顔が「正しかった」のか「間違っていた」のかは、本来、誰にも決められない。私たちが見ているのは、彼の顔の動きそのものというより、その動きに自分自身の物語を重ねた結果でしかないからだ。
そしてそれは、今回の件に限った話ではない。私たちは日常的に、家族や同僚のちょっとした表情の変化についても、同じように「自分の文脈」を通して意味を決めつけてしまっている。WEST.の解散動画の騒動が浮き彫りにしたのは、1つのグループの終わり方の是非というより、人間が「見た目」から意味を読み取るときの、根源的な危うさそのものだったのかもしれない。
【参考・引用文献リスト】
※1:Robinson, R. J., D. Keltner, A. Ward & L. Ross (1995) Actual Versus Assumed Differences in Construal: "Naive Realism" in Intergroup Perception, Journal of Personality and Social Psychology, 68(3), 404-417.
※2:Prince, S. & W. E. Hensley (1992) The Kuleshov Effect: Recreating the Classic Experiment, Cinema Journal, 31(2), 59-75.
※3:Aviezer, H., R. R. Hassin, J. Ryan, C. Grady, J. Susskind, A. Anderson, M. Moscovitch & S. Bentin (2008) Angry, Disgusted, or Afraid? Studies on the Malleability of Emotion Perception, Psychological Science, 19(7), 724-732.
※4:Kahneman, D., B. L. Fredrickson, C. A. Schreiber & D. A. Redelmeier (1993) When More Pain Is Preferred to Less: Adding a Better End, Psychological Science, 4(6), 401-405.


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