ただ、アメリカから制裁対象とされたICCの赤根智子所長の名前にはあえて触れなかったことが、「トランプ大統領への露骨な忖度(そんたく)」(外相経験者)との不満・批判につながったとみられる。
その一方、「旧敵国条項」をめぐっては、高市首相が昨年11月、台湾有事について国会で「存立危機事態になりうる」と答弁した後、中国がSNS上で同条項は依然有効だと主張していた。
こうした経緯も踏まえて、高市首相は「70年間にわたり、国連に大きく貢献してきた日本の誇りと名誉に懸けて、強く申し上げておく。旧敵国条項は早急に削除されるべきだ」と議場に向け、拳を振り上げて訴えた。
旧敵国条項は日独伊など第2次世界大戦の「敵国」に対して、安保理の許可なしに軍事行動をとれるとした規定。2005年に中国を含む加盟国が削除する方針で一致したが、いまだに実現していない。官邸周辺によると「高市首相は自ら演説に加筆するこだわりようだった」(側近)とされる。
これに対して、中国外務省がすぐさま23日の記者会見で「ファシズムや軍国主義が再び平和と安全を脅かすことを防ぐ重要な制度的枠組みだ。今日(こんにち)でも重要な現実的意義を有している」(郭嘉昆副報道局長)と反発するなど、「日中対立のさらなる拡大」(外務省筋)につながった。
そもそも、高市首相にとって「自らの発言でこじれた日中関係の立て直しが最優先の外交課題となる」(外相経験者)のは間違いない。だからこそ官邸周辺は「高市首相は11月に中国で開催される国際会議などを通じて改善の糸口を探りたい考えだ」と繰り返す。しかし、今回の国連演説で高市首相が訴えた旧敵国条項の削除は「今後の対中外交の新たな火種となる可能性大」(同)との見方が広がる。
「華々しい国連外交」でも評価は微妙
高市首相が帰国した24日の夜には、都心部のホテルで中国大使館主催の「中華人民共和国成立77周年祝賀レセプション」が開催され、多くの日中関係者が集結した。その席でも日本側の出席者から「日中関係は、高市政権が続く限り、改善どころかさらなる悪化が避けられない」(元外務省最高幹部)という声が噴出した。
高市首相の今回の国連外交でのハイライトについて、官邸筋は「日米首脳会談でトランプ大統領との親密な関係と、日米同盟のさらなる強化を世界にアピールできたこと」と胸を張る。
ただ、「これまでどおり『ドナルド』と呼びかける高市首相に対し、トランプ大統領は『日本の首相』という表現を変えなかった辺りに、双方の意識の違いが浮き彫りになる」(日米外交専門家)との指摘もある。
日米首脳会談で高市首相が念押ししたとされる「米中首脳会談での台湾問題での譲歩」は、25日の米中首脳会談を見る限り、「中国への牽制にすらなっていなかった」(同)のは否定できない。「華々しかった高市首相の国連外交も、長期的な視野で見ればプラスかマイナスかは極めて微妙」(同)といった見方も出ている。


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