盆栽作りを子どものしつけにたとえる人もいます。
言葉づかいやお辞儀のしかた、箸のもち方など、社会人となるためにはさまざまなことを学ぶ必要があります。
型にはめるというよりも、必要なところを伸ばしていくイメージでしょうか。鉢という人工の空間に植えられた以上、樹は人間が管理しなければならないのです。
仕立てるのには数十年かかることもある
盆栽は人の手の入った樹です。とはいえ生きている樹ですので、粘土や石で彫刻を作るようには加工できません。
幹や枝を曲げる場合にも無理のない範囲で進めますし、特に枝を伸ばすには相当な時間が必要です。
他にも根を少しずつ露出させ、幹の一部にしていくといった、根気が必要な作業もあります。
このため盆栽を仕立てるには、時として数十年という歳月がかかってきます。
ある企業経営者の家の話なのですが、その方の祖父である創業者が亡くなってからずいぶんとたって、出入りの盆栽園から盆栽が届けられたそうです。
祖父の方が生前に、こういう盆栽を仕立ててほしいと依頼していた樹が、やっと完成したというわけです。
今であったなら、その手間賃をどう支払うかでもめそうですが、昔の財界人は違います。依頼した時点で、ちゃんと数百万円という料金を払っていたのです。
ですが当の愛好家がいなくなってしまうと、盆栽を維持するのは大変です。
盆栽園に預けるという手もあるのですが、維持管理費を払わなければいけません。これは月額で1万円、2万円などとなっており、特に優れた盆栽であれば相当な維持費が求められます。
近代の盆栽愛好家には三菱財閥の岩崎小弥太、東武グループの根津嘉一郎などがいます。
この2人の蒐集した数々の美術品はそれぞれ東京・世田谷にある静嘉堂文庫美術館、同じく青山の根津美術館に納められているのですが、盆栽のコレクションは美術館に移管されず散逸してしまいました。やはり管理の問題からでしょう。
逆にこれは、盆栽が新しい持ち主のところに渡っていったとも言えます。
盆栽は人間よりも長い歳月を生きる存在であり、人から人に伝えられていくものなのです。

