有料会員登録 東洋経済オンラインとは
ライフ #日本野球の今そこにある危機

張本勲さんが86歳で死去 「喝!」だけでは語れない壮絶な生涯…広島で被爆、通算3085安打、韓国プロ野球創設にも尽力した知られざる人生

9分で読める
2024年の巨人のファン感謝イベントで行われた球団創立90周年セレモニーに参加した張本勲さん(写真:時事)
2/4 PAGES
3/4 PAGES
4/4 PAGES

張本自身は多くを語っていないが、リーグの創設、運営などに主体的に関与するとともに、在日二世のプロ野球選手などの移籍をあっせんしたといわれる。張本の東映時代の後輩で、韓国の社会人野球から東映に入団した白仁天は、首位打者を取るなど活躍したが、韓国プロ野球1年目の1982年にKBOのMBCに移籍しプレイングマネージャーとして打率.412で首位打者を獲得した。白の移籍に際しても張本は動いたとされる。白仁天も今年8月15日に逝去した。

45年目を迎えた韓国プロ野球(KBO)は、昨年観客動員が1200万人を超えるなど、大人気となっているが、KBOの今の繁栄は、張本勲の尽力なくしてはあり得なかったのだ。韓国政府は2007年、民間人の最高勲章である「無窮花章」を張本に授与した。韓国プロ野球と張本勲の関係については、まだまだ語られていないという印象が強い。

「守旧派」の頑なさの裏にあったもの

日本での張本勲は「喝!」で知られるこわもての野球人という印象だった。2019年、大船渡高の佐々木朗希(現ドジャース)が、岩手県大会決勝で登板回避したことが報じられると「サンデーモーニング」で張本は「絶対に投げさせるべきだった。怪我を怖がったらスポーツ選手はやめたほうがいい」として「喝!」をした。

これに対してダルビッシュ有は「シェンロンが一つ願いごとを叶えてあげるって言ってきたら迷いなくこのコーナーを消してくださいと言う」と猛反発した。

また、日本人選手のMLB移籍問題については、次のように語っている。

「あなたの会社にやり手で優秀な社員がいたとする。その社員が『海外のもっと大きく、給料も高い会社で働きたい』と思っていたとしよう。会社にとっては大きな痛手だが、新しい会社に行くのか、残るのか、それは本人の自由だ。しかし、その社員が何らかの理由で新しい会社から戻ってくることになったとしたら、あなたはどう思うだろうか。『おかえりなさい』と迎え入れる気持ちに私はなれない。『勝手にやめて勝手に戻ってきやがって』と思うだろう。それと同じだ。コミッショナーは制度をしっかりと見直し、メジャー流出に歯止めをかけてもらいたい」

筆者は張本勲を「守旧派」だと思ってきた。その思いは変わらないが、彼の悲惨で複雑な前半生、そして引退後の韓国野球への献身を思うとき「昭和の日本野球」を無上のものとする頑なな姿勢の裏には、何か秘めたる事情があったのではないかと思っている。張本はあまりにも「自分」について語ってこなかった。

3年ほど前まで毎年2月の春季キャンプでは、おぼつかない足取りでグラウンドに入る張本の姿を見かけたが、もう見ることはできない。

日本プロ野球の最多安打の張本勲、最多本塁打の王貞治、最多勝の金田正一は、いずれも海外にルーツを持つ野球人だ。そして多かれ少なかれ「差別」を経験してきた。筆者は、このことについて、もっと深掘りすべきだろうと思っている。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数