この日の発刊イベントのチケットは早々に完売。当日は開場前から多くのファンが周辺に集まり、席はあっという間に埋め尽くされた。そして、桜井さんの登壇とともに会場は静かな熱気に包まれた。
イベント前半のトークは、今回の著書執筆の意図や、当時の撮影現場の印象的な出来事がざっくばらんに笑顔で語られ、サッパリとした性格の桜井さんの姉御肌の気質を心地よく感じながら、貴重なエピソードの数々を興味深く聞いた。
当時、特撮といえば『ゴジラ』をはじめとする東宝の映画だった時代に、それをテレビシリーズに移行する転換期を生きた俳優たちと監督、プロデューサー、カメラマン、美術スタッフらが一体となって、成功するかも何者になるかもわからないなか、手探りで一時代を築いてきた。その渦中のど真ん中にいた桜井さんの体験談と、そのときの思いに、胸を熱くさせられる。
桜井さんは、女優デビューして間もない10代の頃いきなり放り込まれた特撮という未知の撮影現場を「考える暇なく次々にいろいろなことが起こり、俳優だから、なんてスカしていられない現場でした(笑)。本にも書いていますが、いま話していることはすべて後になって感じたことです。でも、そこにいて経験したことが、知らず知らずのうちにその後の生き方に影響を及ぼしていました」と振り返った。
貴重なエピソードの数々には素の人柄がにじんでいた
さまざまなエピソードでは、いまは亡きスタッフを含めて、当時をともに戦った戦友たちの実名とともに、思い出深い出来事やハプニングが、ときに感慨深く、ときにおもしろおかしく語られた。そこには、その時代の関係者それぞれの人柄がにじみ、彼らへの愛と敬意が込められた温かさがあった。
「当時はみんながドタバタしていてカッコ悪かった(笑)。そこから時代を超えていい作品と言っていただけるものが生まれたことは本当に嬉しいです。日の目を見なくてもおかしくない作品でしたから(笑)」(桜井さん)
終始笑顔だった桜井さんだが、ヒロインの視点から『ウルトラQ』の原点を振り返ったトークには、まるで当時の息遣いがそのまま伝わってくるような生々しさを伴う言葉の数々があり、歴史を作ってきたスターに宿るすごみを感じさせた。


※ログイン後、コメント入力が可能です。