従来モデルの場合、地面から後輪(26インチ)の最上部までの高さは、約66cm。身長160cmの大人の場合、およそ16kgの子どもを、毎回足の付け根あたりまで持ち上げる必要があった。
仕事で疲れ切った体で自転車を走らせ、子どもを保育園まで迎えに行き、ときに「やだ!乗りたくない!」と激しく抵抗されながらの乗せ降ろしは、想像以上の苦労だった。
「お客様に『このメーカーには女性社員がいないのか?』と思われたくない……」
この雑談をきっかけに、当時商品開発部に所属していた土岩恵さんは、思い切った行動に出る。後日開催された社内懇親会で、社長に直談判したのだ。
「次に子乗せモデルの新商品を企画するときには、ぜひメンバーとして参加させていただけませんでしょうか!?」
飲みの席ということで、お酒の力を借りた部分もあったのかもしれない。だが、この突拍子もない提案が、大ヒット商品誕生への「最初のひと漕ぎ」となる。
社長への直談判から始まった「子乗せ自転車」プロジェクト
翌朝、土岩さんが出社すると、ふいに社長に呼び出された。
「子乗せ自転車のプロジェクトを立ち上げなさい。失敗しても私が責任を取るから、やりたいようにやったらいい。メンバーの選出も、全部任せます。ただ、活動期間は3カ月間だけですよ」
想定外の展開に、言葉が詰まった。
「商品企画の計画に組み込もうと思うと、実現は何年も先になります。ならば、『毛色の違うメンバーにやらせてみるのも面白いかも……』と、社長にはそんな思惑があったのかもしれません」(土岩さん)
早速、ランチ仲間に声をかけて、プロジェクトチームを発足。育休明けの0歳児を育てる社員から、大学生の子どもを持つベテランまで、年齢も経験もさまざまなママ社員がメンバーとして集まった。
さて、大変だったのはここからだ。メンバーは全員、普段の業務とプロジェクトを兼務することになった。集まれるのは、週に1回だけ。しかも、突然立ち上がった企画のため、予算はゼロだ。それでも限られた時間を捻出し、スピーディーに物事を進めていった。


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