まず取り組んだのは、メンバー同士で自由にアイデアを出し合うことだ。
「後ろのチャイルドシートの高さを下げられないか」
「スタンドを立てたときに、ハンドルが自動でロックされたら安心」
「車の電子錠みたいに、鍵を出さずに解錠できたらいいのに」
実現できるかどうかは一旦おいておき、現行品の気になる点や、理想の子乗せ自転車について考えを膨らませていった。次に行ったのは、男女問わず、社内の子育て経験者90名を対象にしたアンケート調査だ。こうした取り組みは社内で前例がなかったが、「子育てのリアルを知る」社員の声を収集することで、日頃の不満は自分たちだけのものではなかったと確信した。
プレゼン用に試作品を作る段階になると、予算が取れないことから、廃材の段ボールやお弁当の仕切りカップ、つまようじなどを使ってチャイルドシートをハンドメイドした。「主婦ならではの発想で、なんとか乗り切りました」と土岩さんは笑う。
そうして迎えたプレゼン当日。ママ社員たちが提案したのは、前輪・後輪ともに20インチという、これまでに見たことのない子乗せ自転車だった。地面から車輪の最上部までの高さは、約51cm。身長160cmの大人が、子どもを膝の上あたりまで持ち上げるだけで、簡単に乗せ降ろしできる仕様だった。
15kgのダミー人形が、幹部を納得させた
プレゼンが進むと、手作り感満載の試作品とともに、見慣れないものが持ち込まれた。3歳児と同じ重さに作られた、約15kgのダミー人形だ。ここで一人の女性社員が人形を自分の子どもに見立て、「保育園への送り迎えでよくある光景」を寸劇で披露。荷物を抱えながら、子どもを乗せ降ろしする様子を見た男性幹部社員からは、「使いづらいとは思っていなかったけれど……実はそうだったのか」と驚きの声が上がった。チャイルドシートの位置が少し低くなるだけで、乗せ降ろし動作の負担がそんなにも変わるとは思っていなかったのだろう。
「当時の幹部層の方々は、世代からして子育てに関わる機会が少なかったと思います。なので、実態についてはよく知らなかった、というのが正直なところなのではないでしょうか」(土岩さん)


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