今は「ロング・エマージェンシー(長期にわたる非常事態)」の時代
――高市首相が進める食料品の消費税率1%への引き下げに、古川さんは公然と異を唱えてきました。古川さんは「財政規律派」の有力議員であり、それが減税に反対した理由だと理解されています。実際はどうなのでしょうか。
食料品の消費税減税の議論が「積極財政派vs.財政規律派」という安易な対立構図に矮小化されている。私は、決してそのような次元の話をしているのではない。
政策論としての論点はいろいろある。「社会保障財源を毀損する」「物価高対策としては低所得者への給付のほうが速い」「消費税は一度下げたら元に戻せなくなる」「農家や小売り、外食産業の現場に重い負担を強いる」など、挙がっている懸念点はどれも大変重要だ。しかし私は、そうした個別の政策論だけで減税に異議を唱えているのではない。
もっと根本にあるのは、第2次世界大戦後80年間続いた国際秩序そのものが崩れつつあるという時代認識だ。私は今の時代を「ロング・エマージェンシー(長期にわたる非常事態)」と呼んでいる。
――ロング・エマージェンシーとは、どのような概念ですか。
これまで私たちは、平時と非常時を分けて考えてきた。しかし今は、一つの危機から回復し切る前に次の危機が来る。しかも戦争、災害、感染症、エネルギー、食料、金融といった危機が別々に起きるのではなく、互いに連鎖し、増幅する。危機が連鎖し、長期化し、日常化する。それがロング・エマージェンシーだ。
――具体的に、危機はどのように連鎖するのでしょうか。
戦争によるホルムズ海峡危機が長期化し、原油や天然ガスの流れが滞れば、肥料、農業、物流を通じて食料価格に跳ね返る。そこに円安が重なれば輸入物価が上がる。政府が補助金や減税を重ねれば財政が傷み、金利を抑えれば円の信認も問われる。一つの危機への対策が、別の危機を招くことさえある。
――「大災害が長期間続く」という単純な意味ではないわけですね。
7月28日の熊本地震への対応が続くさなか、今度は千葉を記録的豪雨が襲った。豪雨は一晩で終わっても、復旧には何週間、何カ月とかかる。その間にまた次の危機が来るかもしれない。ロング・エマージェンシーとは、「非常事態が終わるのを待てば元に戻る」という前提が崩れることだ。だから国家設計も、「危機への事後対応」から「危機が続いても暮らせる国をつくる」へ転換しなければならない。
この記事は会員限定です
残り 4740文字


※ログイン後、コメント入力が可能です。