様々な漫画や本を何年も読んでいくうち、私は、
「自分はここの家の子ではない」
という確信を得た。こんなに両親が喧嘩ばっかりしている、みっともない家がこの私がいるべき家のわけがない。そこで私は本当の両親を探し求め町内を自転車で走り回った。私の想像では、父親はフランス人のパイロットで、母親はファッションモデルをした後、ファッションデザイナーをしている日本人だった。その人たちが住んでいそうな家を、探し回ったのである。緑が鬱蒼(うっそう)と茂った広い敷地のなかに、三角屋根が目立つすばらしい洋館があった。煙突もあって2階の窓にはステンドグラスもある。
(ここだ!)
と私は直感した。門にあったのは英文字で表記された日本人ではない名前で、それもまた私の直感の後押しをした。しばらく門の前で、庭に誰かがいないか、と立派なバラの生け垣の隙間から中をのぞくと、広い芝生で白いイヌが走り回っていた。本当ならば私もあのワンちゃんを撫でているはずなのにと、のぞき続けていると、5歳くらいのかわいい男の子が笑いながらイヌを追いかけていた。
(ああ、あの子が私の弟だ)
と思った。茶色い髪の毛に白い肌で、まるでお人形のようにかわいい。
(ごめんね、離ればなれになって。お姉さんはここにいるよー)
と心の中で叫びながら、庭をのぞき続けていた。
本当の家族が見つかり、胸がどきどき
そのとき買い物カゴをぶら下げた下駄履きのおばさんが、やってきた。私のほうをじっと見ながら歩いてくる。子ども心にこれはまずいと、何もなかったようなふりをして自転車を漕こぎはじめると、彼女は特別、私をにらみつけるわけでもなく、ちらりと洋館の庭のほうに目をやって、歩いていった。私はおばさんをやり過ごしても、また洋館に戻る気はなく、町内を徘徊しながら、
(絶対にあの家は私の家だ)
と信じ、こんなに早く、本当の両親と弟が見つかるとは思わなかったと、胸がどきどきした。


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