有料会員登録 東洋経済オンラインとは
ライフ #お節介再発見――令和版やさしさのカタチ

「みんなでお父さんのところに行こうか」母が死を考えたそのとき…84歳PR会社創業者が胸に刻む"名もなきお節介"

9分で読める
高橋恵さん
高橋恵さんの立ち上げた「おせっかい協会の輪」は全国に広がっている(写真:高橋恵さん提供)
2/4 PAGES

生活に行き詰まった母は、「みんなでお父さんのところに行こうか」と、高橋さんたち3人を道づれに無理心中を考えるまで追い詰められた。そのとき、玄関からカタカタと音がしたという。見ると、扉に1枚の紙が挟まっていた。

「あなたには3つの太陽があるじゃありませんか。今は雲に隠れていても、必ず光り輝くでしょう。どうかそれまで、死ぬことを考えないで、生き抜いてください」

差出人の名もない手紙だったが、3つの太陽とは、高橋さんたち子どものことを指しているだろうことがうかがえた。

「手紙を入れてくれたのはおそらく、近所の方だったと思います」

その手紙で高橋さんの母は我に返り、生きる気持ちを取り戻した。

「他人が書いてくれた小さな紙切れで、私はここまで生きているわけです」

高橋さんにとってお節介は単なる世話焼きでは終わらない、人が人を生かす行為そのものとして心に焼き付いた。

「天知る、地知る、我知る」

暮らしは苦しくても、母は子どもたちの教育を大切にしていたという。人に迷惑をかけないことに加え、高橋さんの心に残る教えをいくつも話してくれた。「天知る、地知る、我知る」という言葉もその一つだった。

「〝あなたのことは天が見ている。大地も、周りの人も見ている。そして、自分のことは自分が一番よく知っている。どんなに貧乏でも、心まで貧乏に染まってはいけないよ〟と小さい頃から教えられていました」

恐らくこれは高橋さんの母親が「後漢書」楊震伝にある「天知る、神知る、我知る、子知る」という言葉を子ども向けにわかりやすく話したのだろう。

その後、生活はさらに厳しくなり、高橋さんは親戚の家に預けられることに。ところが、待っていたのは、小間使いのような暮らしだった。居候の身となり、預け先の親戚の家で家中を掃除しなければならなかった。冷たい水で雑巾を絞るため、手はしもやけで腫れ上がったという。

玄関を入ってすぐ目に留まる「天知る 地知る 我知る」の額は、お節介な友人からの贈り物(写真:筆者撮影)
3/4 PAGES
4/4 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数