何よりビジネスホールでのベンダー展示(エキシビジョン)は年々増えつつあり、ハッカーカンファレンスからトレードショーへの転換は感じていた。
だが、そもそもBlack HatはDEF CONコンテンツの商業化・マネタイズの限界から派生的に生まれたもので、2005年にはジェフ・モスがCMP(イベント企業)に運営権の一切を売却している(現在はInforma傘下)。ただし、ジェフ・モスはBlack Hat Review Boardの議長を務めており、イベント内容や論文採択にはかかわっている。
Black Hatの変化を単なる商業化、マネタイズ戦略で評価するのは正しくないだろう。では、政府高官4名のパネルディスカッションが示すように政府寄り・体制寄りになったのか。あるいは政府による介入があったのか。
実際、このパネルディスカッションは、軍のベネズエラ攻撃でのサイバー作戦やEpic Furyにおけるイランへの軍事攻撃、FBIのサイバー犯罪への取り組み方針(国外逃亡や海外拠点も容赦しない)といった取り組みを称賛しつつ民間企業の協力体制を仰ぐというものだった。
事実、Black Hat USA 2026閉幕の6日後の8月12日にトランプ大統領は民間企業による委託サイバー攻撃に関する覚書(Expanding Capabilities to Combat Transnational Cyber-Enabled Crime)に署名している。
政府や法執行機関との関係を改めて考える必要がある?
世界的なBlack Hatで政府高官に攻撃的サイバー作戦を語らせたのは、この現代の私掠免許(Letter of Marque:海賊行為に対する国家のお墨付き)に相当しかねない措置(本件は行政権限で出されたもので議会法案ではない)に対する議論の露払いではなかったのか? そんな憶測さえ生む。
かなり政府寄りのパネルだったことは間違いないが、ここでBlack Hatが体制プロパガンダにくみしたという分析も注意が必要だ。
覚書では、民間企業が攻撃的なサイバー作戦を行使できるのは司法省・国土安全保障省の承認、政府監督下、100万ドルの供託金など制限が設けられている。また、協力企業への報復や免責範囲の問題など未解決の問題が多い。
敵対国がアメリカ政府関与の口実に利用できるといった点も指摘されている。実効性の検証もなされていない。CISAもFBIも民間協力を謳うが、積極的なサイバー攻撃までは、今のところ踏み込んでいない。
「Hack Back」(防御側による防衛目的の積極的なサイバー攻撃)に対する反対意見もあり、今年の講演の中には、「法整備や環境整備が不十分でHack Backや私掠免許で問題解決を図る段階ではない」という主張もあった。「監視カメラシステムの人物検知を服装で欺く方法」などハッキング技術の発表などハッカースタイルの発表も健在だった。
筆者は、Black Hatが体制寄りになったというより、変化を拒絶するより受け入れるというBlack Hatの文化を守った結果と考える。あるいはその方向性をさぐるための変化(過渡期)と捉えるべきだろう。だが、同時にセキュリティ関係者は、単に攻撃者と対峙するだけでなく政府や法執行機関との関係を改めて考える必要が出てきたとも言える。




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