そして、次の例えをあげてくれた。50メートル走を11秒で走っていた子が10秒で走ったときに声かけしたとしても、あまり子どもの自信にはつながらない。8秒か7秒で走ることができたときに、ここぞと褒めれば、その子は大きな自信を持つことになる。
ただ、条件によっても違ってくる。その子が小学生なら、1秒であっても褒められれば喜び、自信につながる。しかし中学生ともなれば、大人の言葉に素直になれない心理もあって、「たいしたことないのに、わざとらしい」と逆に反発することになるかもしれない。自信にも自尊心にもつながらず、社会情動的コンピテンシーの向上にはならない。
社会情動的コンピテンシーの1つであるメタ認知の高さが学力に、学力向上が社会情動的コンピテンシーの向上にもつながるとの研究結果が出たとしても、それを学校現場で効果的に実践するのは簡単ではない。横浜市の教員は、それを理解し、実践できているのか、丹羽氏に質問した。
「私たち(教育委員会)は、できていると信じています。ただし、声かけが効果的だったかどうかは経験則でしかないのも現状です。どういう声かけが社会情動的コンピテンシーの向上につながるのか、もっと客観的なデータに基づいて判断できるようにしていこうとしています」
学校での実践は、まだまだ今後の課題だということである。
教育の力に発展、定着させるのはこれから
同じことは、保護者に対しても言えそうだ。横浜市が社会情動的コンピテンシーに力を入れている理由を保護者に理解してもらえないのでは、「余計なことはしないで、学力向上に力をいれてくれ」ということになりかねない。そうなれば、社会情動的コンピテンシーを学校現場で重視していくことは難しくなる。
「保護者のみなさんに納得いただける結果と見方を提供していくのは、行政の使命だと思っています。学校というものを理解していただくためにも必要だと考えています」と、丹羽氏。
社会情動的コンピテンシーが意味のあることだという結論を、横浜市は調査研究によって得ることができた。しかし、本当の教育の力にまで発展させ定着させていくのは、これからのことのようだ。




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