庭にも生活用品が積み重なり、屋内と屋外の境界はとうに曖昧になっていた。野良猫が家のあちこちの隙間から出入りし、動物たちの通路になっていた。ネズミやイタチも侵入していたとみられる。
「境界が曖昧になると害獣が発生しやすくなります。家と外の区別がなくなった家はこういうことになる」
作業が始まると、猫の白骨死体が見つかった。確認できただけで4匹。外から入り込んだ野良猫が誰にも気づかれないまま、この家の奥で息絶えていた。
自治体にもよるが、動物の死骸を敷地内で発見して引き取りを依頼しても、対応してもらえないことも多い(敷地の所有者が処分、もしくは環境事務所などに持ち込む必要がある場合も)。
今回の家がある自治体では、引き取りに来てくれるが、市の職員は私有地に立ち入ることはできない。死骸を敷地外に出してはじめて、道路で死んだ野良猫として引き取ってもらえるという。スタッフが箱に入れて運び出し、市に連絡を入れた。
「猫は死ぬとき隠れる場所を探すと言いますよね。ここを死に場所として選んでいたんだと思います。人の家だというのに、それだけ誰の目にもつかないような場所だったんですね」
子どもたちに悲しさや寂しさはなかった
すでに施設へ入居している父親は、片付け作業には立ち会っていない。子どもたちが残したのは、趣味用品と切手帳だけだった。ゴミ屋敷が原因で口論が絶えなかった父と折り合いをつけるために、これだけは残そうと選んでいたのだ。
作業中、子どもたちはほぼ無言だった。近所の人が様子を見に来ても、喋らず黙々と仕分けを続けていた。
「悲しみや寂しさというよりも、ホッとしている様子でした。この家はずっと、家族が抱える問題だった。つっかえていたトゲがようやく取れた、という感覚に近かったんじゃないかと思います。その空気がにじみ出ていました」

