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オメガの腕時計「コンステレーション」は、広告や映画、メットガラなどでジョージ・クルーニーやニコール・キッドマンといったスターの手首を飾り、ラグジュアリーと華やかさの象徴となってきた。しかし、金価格が1月に付けた過去最高値に近い水準で推移する中、こうした定番の時計の一部は溶解されている。金の価値がリセール価格を上回るためだ。
ロイターが10人超のトレーダーや専門家、投資アドバイザーに取材したところ、この動きの影響を最も受けているのは、オメガや、仏モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)傘下のタグ・ホイヤーといったブランドの中古モデルだという。
英ゴールド・トレーダーズのディーラー、ジョン・ホワイト氏は5月、非常に良い状態の1970年代後半の18金コンステレーション1本を溶解した。投資用金の需要増加に伴い、今年に入ってから溶かした高級時計は数十本に上る。
オークション会社も運営する同氏はロイターに対し、「美しい時計だが、実際のところ、顧客がオークションに出したとしてどれほどの値が付いただろうか」と語った。
スウォッチ・グループ傘下オメガが製造するコンステレーションの多くのモデルと同様、この時計に含まれる金の価値は5750ポンド(約124万円)で、推定落札価格4000―4500ポンドを35%上回っていたという。
ウォッチズ・オブ・スイスの中古部門「アナログ・シフト」の創業者ジェームズ・ラムディン氏は、溶解は「主に比較的新しい中古品や、収集対象になっていないビンテージ時計が溶解されている」と指摘した。
スウォッチとロレックスの広報担当者は本件についてコメントを控えた。LVMH、リシュモン、パテック・フィリップ、オーデマ・ピゲからは回答がなかった。
流れる金
地政学リスクや貿易不安を背景に、安全資産とされる貴金属への需要が高まり、金価格は1月に1オンス当たり5600ドルの過去最高値に急騰した。現在は4200ドル前後で推移し、2024年平均の2倍近くになっている。
しかし、中古時計の市場価格は同様の上昇を見せていない。
時計史の専門家エイドリアン・ヘイルウッド氏は「悲しいことだ。当然ながら、一度溶かしてしまえば二度と戻らない」と語った。
高級時計がどれだけ溶かされているかを示す公式統計はない。ワールド・ゴールド・カウンシルによると、第1・四半期の金リサイクル量は前年比5%増の366トンとなり、金の宝飾品需要は金額ベースで31%増の470億ドルに達した。
時計に含まれる金はごく少量から200グラム超まで幅があり、スクラップして溶かした場合の価値は数万ドルに及ぶ場合もある。オメガのコンステレーションは、ケース(ムーブメントを収める本体部分)とバンドに金が使われている。
金価格は今年、1オンス当たり5400―6300ドルに達するとも予想されており、再販業者がコストや保証を提供する負担を抱える中、時計をスクラップにする圧力は続く見通しだ。
また、過剰生産された新品の時計も溶解対象となり得る。
ラムディン氏は「平凡な時計が大量に溶解されるのを見てきた。スイス市場には売れ残りの在庫が多い。これらは実質的に新品で未着用だが、解体されている。作りすぎたのだ」と語る。
「しかし、興味深い物語がある時計や味の出てきた時計、希少なビンテージ品でそれをやってしまうと、短期的な判断による悲劇になる」
リセールの罠
生産量を厳格に管理する非上場のパテック・フィリップやロレックスなど高級ブランドは、溶解価値を大きく上回るプレミアムを維持していると業界関係者3人は指摘する。
高級時計プラットフォーム「クロノハンター」のPR・コンテンツ責任者ラザルス氏は「モデルによっては待機リストが天文学的で、2年から8年待ちだ」と述べた。
フォントベルによると、3000スイスフラン(約61万円)を超えるスイス製新品時計の販売額に占めるロレックスの割合は、2025年に61%と、販売数量は減少したものの2023年の57%から上昇した。
一方、タグ・ホイヤー、ブライトリング、オメガなど比較的希少性の低いブランドは、新品価格で高値を維持しにくく、より安価な中古品が購入可能なため苦戦している。
専門家3人によると、オメガのスピードマスターなどは販売後に価格が急落することが多く、スクラップの対象になりやすい。
売るべきか売らざるべきか
金価格の上昇を受け、米ニューヨークの元エンジニア、タリスマンさんは12月、純度58%・合計35グラムの金を含む時計2本とチェーンを2660ドルで売却した。
タリスマンさんは「10年以上、金庫に入れたままの品がたくさんあった」と語った。
一方で、売った時計がのちに業者によって溶かされてしまう可能性を恐れる所有者もいる。
ヘイルウッド氏は「家族の品かもしれないし、最初の時計かもしれない。破壊されるという考えを嫌い、手元に残す人もいる」と話した。

