私立高校の現場から聞こえてくる「悲痛な実態」
「生徒が多すぎる。都立にしておけばよかった」
今春23区内の私立高校に入学した新入生の言葉だ。その高校では入学者数が定員を約200人も上回った。入部希望者が殺到したため、部活動によっては急きょオーディションが実施された。希望する部に入れない生徒も少なくなかったという。
別の私立高校でも、定員を大幅に超える入学者を受け入れた。学校側からは、指定校推薦枠の確保が難しくなる可能性が示され、保護者の間では不安や戸惑いの声が広がっているという。
今春、都内の私立高校では推定40校が定員超過となったとされる。学校側にとっては特需ともいえる状況だが、生徒や保護者が抱いていた期待との間には少なからぬ齟齬が生じている。
入学者が増えた私立高校に勤務する知人によると、少人数授業を取りやめ、特別教室を普通教室に転用し、非常勤講師を臨時で採用して対応しているという。「教育の質への影響は甚大では」と尋ねると、「最上位コースは何とか維持したいが、それ以外の生徒には……」と率直な答えが返ってきた。
筆者が教えている塾での保護者面談では、「上の子は私立に進学させたが、下の子はやはり都立に行ってほしい」という声も聞かれる。私立高校は依然として費用負担が大きく、補助金が出るまでに用意しておく準備資金も少なくない。さらに、「塾に通わなくても大丈夫」と説明していた学校でも、実際には多くの生徒が塾や予備校を利用しているのが実情だ。
現場で聞こえてくる声を総合すると、全国に先駆けて高校授業料の実質無償化が進んだことで高まった私立人気は、そろそろ落ち着きを見せ始める兆しもうかがえる。その反動として、再び都立志向へと回帰する動きが広がる可能性もありそうだ。

