共催:ネットスイート、東洋経済新報社

特別講演
「インダストリー4.0:ドイツ国策からひも解く、
企業成長のためにすべきこと」
川野俊充氏
フォーラムは、まずベッコフオートメーション代表取締役社長の川野俊充氏による特別講演で幕を開けた。
世界で初めてパソコンをベースにした産業用の機械制御システムを製品化したことで知られるベッコフオートメーションは、ドイツのメーカーで、過去15年間年率平均16%の成長を遂げている。その日本法人の社長である川野氏によれば、インダストリー4.0は、2013年4月、ドイツの産官学の有識者が政府に提言したことに始まる。その後、ドイツの国策として推進され、今ではドイツの大手企業の大半を巻き込んで展開されているという。通信規格やデータのフォーマットなどスマート工場の「協調領域」を標準化して新しい市場を創出していくこと、カスタム製品を量産品の価格・納期で提供できるモノづくりやバリューチェーンを実現することなどを目的とし、ドイツの国全体の力の底上げを目指している。川野氏は同社の顧客であるキッチンメーカーをケーススタディに取り組みの実例を紹介。同じような取り組みが米国など各国で始まっているという。そして「日本でも新しいビジネスをみんなで考えていくステージに入った」と指摘した。
また、「インダストリー4.0にはエボリューションとレボリューションの両方の側面があり、競争領域はエボリューションさせていく一方、IoTなどの新しい技術を使って市場を形成させていくところではレボリューションを求めていくのがよい」として、「これからは無限の在庫があるクラウドから事業リソースをソーシングできる世の中になっていく。そういうことに備えておくことが重要だ」と語った。
問題提起
「バリューチェーンの変革に備えよ
~変化の中で飛躍するための経営基盤とは~」
バイスプレジデント&
ゼネラルマネージャー
中西智行氏
クラウドERPシステムをグローバルに提供しているネットスイートの中西智行氏は、インダストリー4.0が日本で広がっていく時にどのようなインパクトがあるのかを、経営情報システムの観点から語った。「インダストリー4.0の時代には、工場の機械から家庭の家電品まですべてがシームレスにリアルタイムでつながる。バリューチェーン全体の効率化と、市場全体のリアルタイム化を推進するのがポイントであり、したがって製造業に限らず流通卸売業や小売業にもインパクトがある。そうした状況に備えるためには、ERPを中心にした業務システムの基盤を整備しておくことが重要だ」と指摘した。
そしてネットスイートは「顧客志向のERPであり、クラウドERPとしてスピードと柔軟性という特徴を持ち、つねに進化していくパブリッククラウドとして新しい機能も容易に追加していける」として、実際の画面を映し出しながらデモを行った。そのうえで「ネットスイートのERPは全世界で2万4000社以上が利用しており、次々と上場を果たしている米国の成長企業の間ではデファクトスタンダード(事実上の標準)になりつつある。国内でも顧客層は、変化をチャンスと捉えてゲームチェンジを進める中小のスタートアップ企業から、海外でのビジネス展開を積極的に進めるグローバル企業に至るまで、幅広い」と述べた。

パネルディスカッション
「オムニチャネル、IoTの実際。
ニッポンの中小企業の戦い方を考える」
パネルディスカッションに参加したのは、オムニチャネル戦略によりメガネ販売業態の進化を推進するオーマイグラスの清川忠康氏、日本発のグローバルIoT BaaS企業であるKiiの荒井真成氏、そして特別講演を行ったベッコフオートメーションの川野氏の3名。モデレーターを務めたネットスイート マーケティング本部の矢田部さやか氏によれば、この3社はいずれもネットスイートのユーザーであり、3氏には、シリコンバレーへの留学やビジネス経験を持つという共通点もある。
代表取締役社長
清川忠康氏
ディスカッションの中で清川氏は、「メガネ販売の業態はEC化が遅れており、オムニチャネル化を実現しているのは自社だけ」と指摘。「中小企業こそオムニチャネル化を図るべきだ」とし、「当社のシステムを中小小売店に開放していけばBtoBのビジネスにもなる。また、単にネットでメガネを売るというだけであれば、インターネットモールに出店するという選択肢もあり得る。当社はもともと、ほかの小売店も巻き込んで業界のインフラを経営していくという構想でスタートした」と語った。
共同創立者、
代表取締役会長、CEO
荒井真成氏
一方、荒井氏は「モノがインターネットにつながりはじめると、モノを単に売って儲けるのではなく、それにサービスを付随し、そのサービスに対して繰り返し課金することが可能になる」とし、課金できる販売チャネル条件として「エンドユーザーをたくさん持っていることと、すでに毎月請求できる関係を持っていること(たとえば携帯事業者、電力会社など)」の二つを挙げた。そして「日本のモノづくりは厳しい状況だが、IoTの時代になり、従来のパーツを提供するモデルから課金型の新しいモデルを展開できるビジネスチャンスと考えればよい」と指摘した。そして、起業に関しては重要な点が二つあり、一つは「自分の資金を出さず、人に出してもらうことを前提とする点である」とし、「これにより投資家やビジネスの先人による自身のビジネスプランに対するレビューを受けることができ、ビジネスプランのブラッシュアップがなされるという大きなメリットの享受がある」と言及。そして、二つ目はさらなる重要な点として、「ビジネスの過程において多くの失敗が待ち受けるという前提のもとに、“早く失敗する(フェイルファースト)”ことである」と述べた。「作りたいモノの完成形を最初から目指すのではなく、お客様が受け入れ可能な最小のモノ(Minimum Valuable Product)を作り、早期フィードバックを受けて改善する。これは、よりよいモノを作るために早くに失敗を認め次の段階に進むことであり、結果として、その過程の時間と、お金の投資を最小限にすることを軸とした重要な手法である」と語った。さらに「Kiiのサービスはそうした思想を実現できるプラットフォームとして提供しており、ネットスイートのようなクラウドサービスを活用することは理にかなっている」と述べた。
代表取締役社長
川野俊充氏
これに対し川野氏は、「競合関係であっても合意形成して標準化してつなげていけば、それだけでも付加価値や顧客満足が高まる」という見解を披露。サービタイゼーションの重要性を指摘し、「IoTの世界で競争原理が変わり、ピンチとチャンスが一緒にやってくる」と語った。また「シリコンバレーは底抜けに明るい雰囲気がある。それは人の考え方や行動様式にも影響がある。そういう意味で企業にとっては環境づくりも重要だ」「AIが普及すれば、クリエーティビティの高い仕事がますます重要になっていく」などと語った。
3氏の話を受け、最後にモデレーターの矢田部氏が「AIにより人の役割がなくなるのではなく、それをどう使うかを考える力が必要になる。情報をどう扱うかがポイントで、中小企業こそオムニチャネルを実現すべきであり、その手法は目の前にある。また、インダストリー4.0は流通業にもチャンスで、IoTというゲームチェンジャーやITを生かし、いかにマインドシフトによる経営改革を実現するかがカギになる」と総括してディスカッションを終えた。
基調講演
「オムニチャネル時代の経営リスクはこう回避する」
パートナー/公認会計士
羽入敏祐氏
最後の基調講演でひので監査法人の羽入敏祐氏は、まず、総務省の家計消費状況調査のデータを示し、インターネット利用が一般家庭に浸透し始めている状況を示すとともに、「オムニチャネルやインダストリー4.0などの新しい技術により、ナレッジ蓄積が進むとともに、ビジネスが複雑になる」とした。そして「複雑化する情報処理に対応するためにはクラウドERPを選択すべき」とし、「優れたビジネスとITインフラが組み合わされれば、リアリティのあるサービスをスピーディにつくれる環境が整う」と語った。また多くの企業がネットスイートを選択した理由として、スピード(導入期間の短さ)を挙げ、「ネットスイートは経営情報を一元的に管理でき、より高度な経営管理が可能になる。いきなりオムニチャネルやインダストリー4.0に入るのではなく、そこに向けたステップとして、社内の会計情報を統合していくマイルストーンが必要であり、ライトな経営をできる企業が発展する」と語って講演を終えた。