インフルエンザウイルスは、1957年の「アジアかぜ」(H2N2型)、1968年の「香港かぜ」(H3N2型)、2009年の新型インフルエンザ(H1N1型)などが代表例である。
コロナウイルスについては、2002年に重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こしたSARS-CoV、2012年に中東呼吸器症候群(MERS)の原因となったMERS-CoVに続き、2019年末に出現したSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)が、パンデミックを引き起こした。
これらのウイルスに共通するのは、RNAウイルスであるという点だ。RNAウイルスは複製時に遺伝子変異を起こしやすく、動物から人へ感染する能力を獲得しやすい。
インフルエンザウイルスは、豚や鳥などを介して「遺伝子再集合」を起こし、免疫をすり抜ける新型ウイルスが突然、出現する。コロナウイルスはコウモリなど多様な動物に広く存在し、人の細胞受容体へ適応しやすい特徴を持つ。
重要なのは、いずれのウイルスも飛沫やエアロゾルを介して呼吸器から効率よく感染が広がることだ。無症状や軽症の段階でも感染を拡大させるため、国境を越えて急速に流行しやすい。この性質こそが、世界的パンデミックにつながる最大の要因である。
感染には濃厚かつ接近が必要
では、ハンタウイルスはどうだろうか。
このウイルスの主な感染経路は、ネズミの尿やフン、唾液が乾燥して空気中に舞い上がり、それを吸い込むことである。倉庫や山小屋の清掃時などに感染が起こりやすい。
今回報告されているハンタウイルスの一種、アンデス型は例外的な存在だ。家族内や医療現場で人から人への感染が報告され、飛沫や近距離でのエアロゾルを介した伝播が疑われている。
とはいえ、アンデス型は新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスのように、広範囲へ効率よく感染するものではなく、感染には濃厚かつ近接した接触が必要と考えられている。つまり、アンデス型は致死率こそ高く、人から人への感染も起こりうるものの、感染力には大きな限界がある。新型コロナウイルスのように、無症状者を介して世界中へ爆発的に広がるタイプの病原体ではない、ということだ。
また、ハンタウイルスは変異がしにくいタイプのRNAウイルスであることも判明している。
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【「ハンタ」の語源は韓国?】
