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クルマと動物の衝突「ロードキル」で考える人間と野生動物が共生する「高速道路」の対応策

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「動物注意」の標識の裏には年間5万件ものロードキル発生の事実がある(筆者撮影)
  • 佐滝 剛弘 みらい観光文化リサーチベース代表 元・城西国際大学教授
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しかし、計画は順調に進まず、資金難で工事のメドがなかなか立たなかった。

その後、民間の財団の寄付や海外からの援助などにより2022年から工事が始まったものの、記録的な豪雨や建設費の高騰などでたびたびストップ。ようやく今年中に完成のメドが立つところまでこぎつけたところだ。

イノシシが描かれた標識は日本全国で見られる(筆者撮影)

この工事の状況は、日本でも民放のニュース番組などで報道され(例えば5月8日『大下容子 ワイド!スクランブル』など)、関心が集まるようになった。現在、道路をまたぐ橋の部分はかなりできていて、番組によれば世界最長の移動距離を渡る蝶として知られるヒメアカタテハも、この橋の上を飛んでいるのが見られたという。

現地では地元住民の関心を高めるために、橋が完成した暁には、「どの動物が最初に“渡り初め”をするのか?」という予想クイズが行われているということも紹介された。

動物を守ることが人間を守ることにつながる

一方で動物のために巨額の資金を投入することに、否定的な意見を持つ人も少なからずいるという。しかし、動物の生態系はひとたび崩れれば人間にも影響を及ぼす。

また、この橋の完成により、橋の建設を見守る生物保護の団体では、人と動物の衝突事故の97%が橋によって防げると見込んでいる。

サルの出没の注意を促す標識。しかし、標識だけでは守りきれていないのが実情(筆者撮影)

人も動物も守るこうした共生への取り組みは、アメリカの他、やはり野生動物の多いカナダなどでも積極的に行われており、人間の利便性のために犠牲になってきた動物を守ることが結局は人間を守ることにつながるという意識が、世界的に高まってきたと言えよう。

とはいえ、自然環境を無視した交通網の建設が、今も行われている地域がある。

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【環境をまったく考慮しない国家プロジェクト】

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