数時間前まで元気だったチロルが、なぜ突然亡くなったのか。
せめて最期に何が起きたのか知りたい──。
女性は民事調停を申し立てたが、病院側の関係者や代理人は出席せず、不成立に終わった。
弁護士にも相談した。しかし、動物医療過誤は専門性が高く、引き受け手を見つけるのは難しかった。
最後に女性が選んだのは、弁護士をつけずに自ら裁判を進める「本人訴訟」だった。
「チロルのことを一番知っているのは私です。それなら、自分自身で進めたら納得できるかもしれないって。どこまでできるか不安もありましたが、結果がどうあれ、最後までやってみようと思いました」
ネットや市販テキストで独学、裁判官の助言も参考に
女性はネットで法律情報を集め、『本人訴訟ハンドブック』や『民事尋問戦略』などの本を読み込みながら訴状を書き上げた。
「中学校の社会の教科書を開くような感覚でした」
さらに、獣医学の専門書にも目を通した。獣医学生が使うテキストを熟読し、準備書面を作成していった。
法廷では、裁判官から「書面が読みにくいです」「次はここをポイントにして整理してください」と指摘を受けることもあった。
それでも女性は助言に従って修正を重ね、少しずつ主張を組み立てていった。
ある時、取り寄せたカルテのモニター記録に違和感を覚えた。
病院側から説明されていた「心肺停止」の時刻より後にも、血圧を測定した記録が残っていたのだ。
「血圧が測れるということは、心臓が動いて脈があるということです。やっぱりおかしいと思いました」
次ページが続きます:
【女性が闘い続けた理由】
