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「外国人を驚かしてやりたいと思います」朝ドラ『風、薫る』に登場した謎の案内人「清水卯三郎」とは何者か

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燕尾服の男性
やることなすこと商人の枠に収まらない人物でした(写真:Graphs / PIXTA)
  • 真山 知幸 伝記作家、偉人研究家、芸術修士(MFA)

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NHK連続テレビ小説『風、薫る』に、坂東彌十郎が演じる謎めいた紳士が登場する。日本橋で舶来品や洋書を扱う「瑞穂屋」の主人・清水卯三郎(しみず うさぶろう)だ。

働き口が見つからず途方に暮れていたりん(演:見上愛)に、卯三郎は手を差し伸べた。住み込みのための長屋を提供した上に、りんを瑞穂屋の店員として雇い入れることまでしている。

看護学生になると同時に、りんは店を辞めることになるが、今度はりんの母・美津が瑞穂屋で働くことに。また、すでに店員ではなくなったりんにとっても、瑞穂屋は人々との交流の場としてあり続けた。

演じる坂東彌十郎によれば、演出家から告げられたキャラクターのイメージは「不思議の国のアリスのウサギ」だったという。ヒロインたちを新しい時代へと誘う案内役というわけだ。

確かに、見たことのない洋書や舶来品が並ぶ瑞穂屋は、文明開化という「不思議の国」への入り口と言えよう。

では、この清水卯三郎は実際には、どんな人物だったのか。

語学と度胸で時代を渡った商人

清水卯三郎は文政12(1829)年、現在の埼玉県羽生市にあたる羽生領町場村で、酒造を営む清水家の三男として生まれた。幼少期から伯父・根岸友山(ねぎしゆうざん)の家に預けられ、友山と親交のある知識人たちから学問を習った。

根岸家で学んだことをきっかけに、オランダ語に強く関心を持った卯三郎。佐倉順天堂の佐藤泰然や、幕府天文台翻訳員の箕作阮甫らから蘭学を学んだ。

嘉永7(1854)年にロシア全権使節プチャーチンが下田に来航した際には、応接係のお供として随行する機会を得た。当時26歳だった卯三郎は臆することなく、片言のロシア語で、プチャーチンに声をかけたという。

後に交流のあった福沢諭吉は『福翁自伝』で、卯三郎のことをこんなふうに評した。

「この人は商人ではあるけれども英書も少し読み西洋のことについては至極熱心、まず当時においてはその身分に不似合な有志者である」

やることなすことが、商人の枠に収まらない人物——それが卯三郎という人間だった。

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【薩英戦争の停戦に一役買った】

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