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「外国人を驚かしてやりたいと思います」朝ドラ『風、薫る』に登場した謎の案内人「清水卯三郎」とは何者か

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燕尾服の男性
やることなすこと商人の枠に収まらない人物でした(写真:Graphs / PIXTA)
  • 真山 知幸 伝記作家、偉人研究家、芸術修士(MFA)
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卯三郎は刀剣、火縄銃、弓矢、陣羽織、酒、醤油、茶、調味料、化粧道具、鏡、人形、木彫、扇子と様々な物を日本から持ってきて、来場者を喜ばせたが、最も反響が大きかったのは「茶屋」の展示である。

それは檜造りの六畳間で、3人の芸者が、欧米人相手に茶や菓子でもてなすというもの。土間、植木、人形を配した日本庭園や縁側まで再現。大盛況を受けて、卯三郎には、フランス皇帝ナポレオン3世から名前入りの銀メダルが授与されたほどである。

帰国後は浅草に「瑞穂屋」を開業。西洋技術の翻訳書や西洋の啓蒙書を出版しながら、歯科医療器具などの輸入販売も手がけるようになった。

明治5(1872)年には「博覧会ヲ開ク之議」という建白書を政府に提出。国内での万博開催を提言している。

また、卯三郎はかな文字論者としても活躍した。実はフランス滞在中に、日本から持参した平仮名の版下を基に、活字の母型を作らせており、帰国後に仮名活字を鋳造。活版や石版印刷技術の導入を図っている。

平仮名論者だった卯三郎は「これからは簡単な平仮名で文章を書くべきだ」と唱えながら、生涯を通して国語改良にも励んだ。

なぜ今回の朝ドラに登場したのか

『風、薫る』の脚本家・吉澤智子は、卯三郎を登場させた理由について「歴史に埋もれた紳士」を描きたかった、と語っている。

文明開化という大波を誰よりも早く感じ取り、身分も国境も関係なく飛び込んでいった埼玉の商人、卯三郎。そのエネルギーあふれた生涯からは、混迷の現代を生き抜くヒントが得られることだろう。

【参考文献】
福沢諭吉著、富田正文編『新訂 福翁自伝』(岩波文庫)
長井五郎著『焔の人・しみづうさぶらうの生涯―自伝“わがよのき上”解題』(‎さきたま出版会)
泉秀樹著「清水卯三郎の生涯」(逓信協会雑誌、1997年12月号)

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