私の研究では、消費者は商品パッケージに対して、脳内で人の顔を見るときと同じ情報処理を行っていることがわかっている。消費者は無意識にパッケージを擬人化して認識している。つまり、パッケージは文字通り「商品の顔」なのだ。
そして人間は、電話越しに声だけ聞くより、直接顔を見て話すほうが相手を信頼できると感じる。
「パッケージは無言のセールスマン」とよく言われる。だが正確には「パッケージは、商品の顔そのもの」だ。顔が見えるセールスマン(ボトルが透けて見えるデザイン)と、顔が見えないセールスマン(イラストで覆ったデザイン)、どちらを信頼するかは、言うまでもない。
食品に置き換えても同じことが言える。ポテトチップスの「顔」とは、あの黄金色のチップスそのものだ。パリッとした薄さ、食欲をそそる焼き色——それが見えることが最大のシズル感(食欲喚起力)になる。
「色」はコンセプトそのもの
私が資生堂時代に携わったヒット商品の1つに、デオドラントスプレー「Ag+(エージープラス)」がある。2001年に発売し、テレビCMを一切打たずに口コミだけで大ヒットし、各店舗のデオドラント棚で売上No.1を獲得した。
この商品の核心は「銀イオン(Ag+)による殺菌消臭」という技術だった。しかし現場には5カ月という短い開発期間しかなかった。広告に使える時間もお金もない。どうやって消費者に「銀イオンの力」を伝えるか。
答えは、パッケージそのものだった。銀色のボトル。商品名「Ag+」(銀の元素記号)。すべてを「銀色」に統一することで、手に取った瞬間に「これは銀イオンの商品だ」と伝わるデザインにしたのだ。
私はこれを「イメージ・モチーフ理論」と呼んでいる。商品コンセプトを外見のデザインで象徴的に表現し、商品名・配合成分・役割にまで関連づける手法だ。Ag+はその成功例だった。
次ページが続きます:
【では、カルビーはどうすればよかったのか。】
