注目すべきは、日本市場の特性だ。欧米の研究では、お菓子や飲料などに使われる色は「緑=ライム」が主流だが、日本では「緑=メロンアイスやメロンパン」の印象を持つ人が多いという。つまり、「メロン=甘み」と連想される場合が多い。色のバイアスは文化によっても微妙に異なるのだ。
では、白黒ではどうなるか。色の情報がゼロになると、前述してきたような味覚の想起がなくなる。脳は「おいしそう」という自動連想を起動するきっかけを失ってしまうのだ。
カルビーのポテトチップスが長年まとってきたオレンジや黄色といった暖色系は、食欲を刺激する力を持っていた。それが白黒になった瞬間、その力は消える。実際に消費者が《モノクロだと食品としての良さが伝わらない》と感じるのは、決して気のせいではない。
「白黒」が消費者にもたらす深刻な影響
色のバイアスは味覚だけにとどまらない。消費者は色から「品質」や「ブランドの個性」も読み取っている。
化粧品業界は、この色のバイアスを駆使している。
「シャネル」の黒いパッケージは高級感・プレミアム感を伝え、「資生堂TSUBAKI」の赤は、椿・和のような艶やかさを体現し、「キャンメイク」のパステルカラーは親しみやすさと若さというイメージを伝えてきた。色だけで、ブランドのコンセプトを瞬時に伝えることができるのだ。
では、今回のカルビーの白黒が消費者に伝えるメッセージは何か。
《ポテトチップスのお葬式っぽい》。このコメントが示すように、白黒は食欲喚起色(赤・黄・オレンジ)の情報をゼロにするだけでなく、消費者に無意識の違和感と不安を呼び起こす可能性がある。
これは意識的な判断ではなく、色のバイアスが生み出す脳の自動反応だ。
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【しかし結果は、完全に予想の逆となった】
