超高層アパートが被害を受けたこの地区は、クレムリンまで約6kmに位置する、政権最高幹部や政権に近い大物財界人のみが住居を与えられる特別な閉鎖的エリアだ。1950年代には当時のソ連指導者、フルシチョフ共産党第一書記が私邸を建設した。現在はプーチンの友人でもあるオリガルヒ(新興財閥)が広大な屋敷を持っているほか、実際に現在住んでいるか否かは不明だが、記録上はゲラシモフ・ロシア軍参謀総長の邸宅もあるといわれる。
こうした事情から、この地区の上空でドローンを迎撃できなかったことはクレムリンにとって衝撃だったろう。
これを物語るように、この事件後、ロシア軍は40基の防空ミサイルをモスクワ中心部に追加配備した。さらにプーチンは慌てて防空面での総責任者である航空宇宙軍総司令官も交代させた。
手こずるドローン攻撃、さらに新型弾道ミサイルの脅威も
しかし、ウクライナのドローンは小型すぎて、対空ミサイルによる迎撃が難しいとも言われる。さらにウクライナではモスクワを攻撃可能な新型弾道ミサイルFP-9が今年夏にも完成する予定だ。今後の首都の防空を悲観する声がロシア軍からも出ている。
変化はまだある。プーチンに対する国民の支持低下が目立っていることだ。その最大の要因は侵攻作戦におけるロシア軍の苦戦である。
「ロシアは『イラン戦争の勝者』になれない」(26年4月3日公開)で紹介したように、今年に入って戦局は大きく変化した。
大きな要因は上記のようなウクライナのミサイル・ドローン戦力の充実だ。ウクライナ軍が長距離ミサイルやドローンで、ロシアの兵器生産工場や兵力集積地を含めた後方の軍事インフラを叩きながら、ドローンで前線のロシア軍を圧倒できる状況が生まれた。
ロシア新規契約兵は80%がドローン攻撃で戦死か
ロシア軍地上兵力の中心である新規契約兵は銃の撃ち方も知らず、最前線までの前進の中で兵士の80%がウクライナのドローン攻撃で戦死する状況だという。
この結果、ロシア軍のウクライナ領土の占領拡大のペースが落ち込んだ。攻勢を続けるロシア軍が地上戦で完全に主導権を失ったとまでは言えないが、アメリカの戦争研究所(ISW)のデータでは、ロシア軍の占領地面積は26年4月に減少へ転じている。今後の動向に注目だ。
さらに最近のロシア各地の石油精製施設や原油積み出し港に対するウクライナのドローンによる波状攻撃に対し、ロシア軍が有効な防止の手立てを打ち出せないことも国民の失望を招いている。
加えてプーチン政権がロシア社会で広く浸透している通信アプリ「テレグラム」を大都市部でほとんど接続不可能にしたことも支持率低下につながっている。
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【プーチン政権の支持率はウクライナ侵攻後の最低を記録】
