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自衛隊員の自民党大会「私人参加」問題の本質/「国歌だから」では済まない自衛隊の政治利用はますますエスカレートする

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自民党大会で行われた国歌斉唱の様子(写真:時事)
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内局が把握していればこの政府見解を意識していたはずだし、許可は見送った可能性もあったのではないか。ただ、官邸から「要望」があったのであれば断れなかっただろう。何しろ首相が失言して、存在しない「中国の戦艦」と発言したら、「中国の戦艦」の実在を閣議決定するような内閣が今の高市早苗政権である。

法律論以前に、組織として毅然として政治から距離を置き、中立を維持するのが将官として組織を預かる者の矜持ではないだろうか。安倍晋三氏の個人葬儀でも儀仗隊を出し、全国的なナショナリスト団体である日本会議のイベントでも鶫3曹の参加を認めたが、「たいした批判もなかったから問題ない」と政治的な中立に対する認識が弛緩していなかったか。

矜持を失った自衛隊

さらに、これに組織的な関与はなかったのか。縁もゆかりもないイベント会社が鶫3曹の連絡先をなぜ知っていたのか。小泉氏や鈴木俊一幹事長は「党大会を企画したイベント会社が鶫3曹に個人に対してお願いをした」と話しているが、高市首相は「自衛官は職務ではなく、私人として旧知の民間の方からの依頼を受けて歌唱した」と述べており、食い違いが生じている。

常識的に考えれば、まず陸幕広報室か中央音楽隊に連絡があったと思われる。そもそも、何の縁もゆかりもない団体やイベント会社から「プロの歌手を呼べば10万円とか20万円のギャラが必要ですが、鶫さんなら自衛官だからタダでいいですよね? お車代もなしで、美容院とかも自腹でお願いします」と言われて、嬉々として出演するだろうか。

「ギャラ」は本当になかったのか。例えば日本会議やイベント会社、自民党からでなく第三者から何らかの形であるいは経由して金品が支払われていないか。

また、なんらかの「密約」はなかったのか。例えば退職後に自民党から参議院議員として公認候補として出馬するとか。「曹」の階級だと50代半ばで定年退職を迎える。自民党の国会議員に「転職」できれば年収2500万円である。顔も売れており、自衛官の票も集まるだろう。自民党も公認して、選挙費用を持っても当選が確実視できるなら損はしない。

そのような約束があれば、出演料は出なくとも利益はある。少なくとも間接的なエビデンスを見るかぎり、そのような疑いをもたれても仕方がないのだ。

さらには、なぜ中央音楽隊の副隊長、音楽隊指揮者である柴田昌宜2等陸佐が党大会に参加していたのか。現場では指揮や指導などはしていないとされているが、まったく無関係で制服も着ていない「私人」がどうして自民党の最高機関である党大会に招聘されていたのか。普通に考えたら何らかの自民党に対する「功績」があったからではないか。

組織として許されないことも、「私人」の立場でなら組織的に動いても問題ない――。そう考えて、自身の自衛官として立場を利用して日本会議のイベントにも何らかの関与をしてきたではないのか。

今回の件では、自衛官による営利企業の「役務提供」も問題だ。「私人であれば自衛官として活動して問題ない」となったとしたら、さらなるエスカレーションが発生しないか。「前も大丈夫だったから、もう少し踏み込んでも大丈夫だろう」とエスカレートして、自衛隊が自民党の私兵化することさえ、十分に懸念されるのだ。

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【順法意識も低い】

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