つまり、自衛隊は「中立を破り私党である自民党に協力した」と認識されたわけだ。
今回のケースは「私人として参加した」と言っても世間では通らないだろう。少なくとも「私人」という抜け穴を使った姑息な方法で政治協力をしたと認識されるだろう。
法の解釈と「私人」という問題の本質
「通常演奏服装」を着用し自衛官と紹介されて歌唱したこと自体、公務で行っても私人として行ってもやったことは同じである。例えは悪いが、事の本質は売春と店舗型性風俗特殊営業店、いわゆるソープランドの関係とまったく変わらない。
同じことをして公務であれば売春だが、「私人」としてはソープランド内では客とキャストの「自由恋愛」だから「売春」ではなく、合法なので問題ないというという論理である。だが行為自体は変わりはない。
売春防止法では売春が禁じられており、いわゆる風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)では、ソープランドは性風俗関連特殊営業に分類される。風営法第2条第6項1号では「浴場業(公衆浴場法)第1条第1項に規定する公衆浴場を業として経営することをいう)の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業」と定義されている。
建前としては、ソープランドの店舗としては従業員に性行為を伴うサービスを提供させている訳ではない。あくまで従業員と利用者との間での合意に基づき性行為、すなわち「自由恋愛」に及んでいるだけであって、店舗のサービスと性行為は無関係であるということになっている。
今回の党大会では、自衛官として官姓名を紹介され、幕僚長の許可を得て「通常演奏服装」を着用して歌唱しても公務であれば違法であるが、「私人」としてならば問題ないというのが陸幕長の見解だ。だが、見る人間からすれば自衛官が自民党大会で歌ったという事実に変わりはない。だからこそ世論が反発した。「私人」として歌ったのだから問題ないというのは、上記のような法の隙間のグレーゾーンを狙ったものではないか。
何か目的がある場合に、自衛隊は抜け穴を使って法的な問題を回避する組織と世間から認識されるだろう。このような認識があれば武力組織、他国なら国を守るべき国軍としてたいへん問題がある認識だ。また国民の信用を大きく損なうだろう。
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【軍と政治の関係】
