信越化学工業と中部電力は28日、今期(2027年3月期)の業績予想の開示を見送ると発表した。イラン戦争に伴うエネルギー供給不安などの影響が見通せないためだ。日本企業は好調な業績を維持してきたが、暗雲が立ちこめ始めている。
信越化学の資料によれば、中東情勢とそれに起因するエネルギーや基礎資材の供給制約と価格変動に鑑み、現時点で合理的に予想を行うことは難しいと判断した。同社は原料のナフサなどの高騰で塩化ビニル樹脂やシリコンなどでの値上げを進めていた。中部電力も前提となる燃料価格や卸電力市場価格などの不確実性が高まっていると説明した。
イラン戦争開戦後、ホルムズ海峡の実質封鎖で原油やナフサの供給が滞り、市況も大きく変動している。燃料や原材料として石油製品や液化天然ガス(LNG)を使う電力・化学業界への影響は色濃い。非上場だが、国内最大の発電事業者JERA(ジェラ)も通期見通しを未定としていた。
中部電力の牛島章博東京支社長は28日の記者向けの説明会で、現在の「ボラタイル」(激しい値動き)となっている市況が安定すれば、一定の条件をつけた上で見通しについて話ができるようになる可能性があるとした。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、信越化学が業績の見通しを未定としたことに対して、驚きと言えば驚きだが、保守的な会社計画を開示するよりは、情勢が見えてから開示の方がいいと判断したのではないかとの見方を示した。
30日には東京電力ホールディングスや関西電力など電力大手の決算発表が控える。化学大手の業績開示は5月中旬に予定されており、イラン情勢の影響への注目が集まる。
著者:小田翔子、古川有希
