とはいえ、自立できることが望ましく、まずは自宅を出るための支援は重要なことは変わらない。ただ、ニュースタートのような都市部で住まいを提供しようとすると親の費用負担が重すぎて継続できないという問題がある。
このため、地方で費用を抑えて共同生活を支援するNPOや、低所得者など引きこもりに限定しない「住まい支援」などのセーフティネットなど、選択肢が広がりつつある。日本の引きこもり支援を取り巻く環境は、大きく変わってきた。
ニュースタートの創業期は、00年代の就職氷河期世代が支援の対象だった。就職難の彼らが職業体験を積めるよう、ニュースタートが通所介護(デイサービス)施設や飲食店、パン屋などを自ら運営することで自立や資格取得をサポートしてきた。
しかし、前述の通り人手不足の昨今、若年層なら格段に働く先を見つけやすくなり、半面、高齢化する氷河期世代の就職は難しいまま。親からのニュースタートへの相談件数も減少傾向にあったという。
こうした状況下、ここ数年、ニュースタートでは活動内容の変更について検討を重ねてきた。しかし「寮運営や施設管理など、規模が大きいから(路線変更は)大変。二神の影響力も大きく、継続は難しいという結論になった」と久世氏は経緯を説明する。
老舗NPOは活動終了でも問題は終わらない
ニュースタートの活動終了前の3月14日には、市川市の事務所で「感謝の会」が開催された。卒業生やスタッフなど100人以上が集まって思い出を振り返るうちに、卒業生らは50代、40代と世代ごとに車座になっていったという。支援を受けなければ、彼らは今と異なる人生を送っていたのかもしれない。
「引きこもり」という存在が社会に知られるようになって長い年月が経過した。対象者の増加と年齢層の拡大を受けて、対策も複雑かつ多様化が進む。32年の歴史あるNPOの活動終了は、その難しさを映し出しているかのようだ。
