しかし、引きこもり支援がメジャー化するに従って多数の団体が乱立するようになるとトラブルも増えていく。特に親の依頼を受けて、引きこもりの人を無理矢理家から連れ出して運営施設に入所させる「引き出し屋」と呼ばれる業者をめぐってトラブルが相次いだ。
親から高額な報酬を受け取りながら、低賃金労働の強制や軟禁があったとして民事訴訟に発展したこともあった。引き出し屋に対する社会からの批判が高まり、厚生労働省が注意喚起するに至った。
25年1月に厚労省が公開した「ひきこもり支援ハンドブック」では、引きこもり対象者とのコミュニケーションにおいて、必ず「本人の同意」を得るよう記載されているなど、引き出し屋に対する批判を意識した内容となっている。
引き出し屋に対してニュースタートの創業者である二神能基氏は「うちは最後まで、本人が自主的に家を出るよう粘り強く働きかけてきた」と批判しつつ、「レンタルお姉さんたちは、拒否されることから始まる仕事。引きこもりの子どもは判断力が鈍っているから最初は拒否する」と、本人の同意を基本とする厚労省の方針は現実と乖離していると指摘する。
創業時からニュースタートのスタッフとして活動してきた久世芽亜里氏も、「親の依頼で家に訪問しても子供に会えないケースは多い。ドア越しに『この日に迎えに来るから寮に行こう』と何度か言い続けると、ちゃんと約束の日にドアが開いて荷造りしていることもあった」と振り返る。
支援に対し人権侵害の訴えも
もっとも、ある30代の男性はニュースタートについて「人権侵害やプライバシー侵害を受けた」と東洋経済にメールを送ってきた。男性はアトピー、脂漏性皮膚炎、酒さ等の皮膚病の重症化からうつ病になり無職だったが、親が相談・契約したことをきっかけに、独り暮らしのマンションにニュースタートの訪問員が接触してくるようになった。
これに対して男性は「訪問、電話、手紙で接触してきたのがストレスとなり、うつ病が悪化して自殺未遂を起こして警察が介入することになった」と説明。そのうえで「自分は皮膚病の悪化に起因するうつ病であり、社会不適合や対人関係の悩み、働きたくないといった一般的な引きこもりのケースとは事情が大きく異なる」と訴える。
男性は「家族関係は完全に崩壊した。現時点では親を許せる状況ではない。(ニュースタートに対し)協議による治療費および慰謝料の請求、公式な謝罪を求めていく」と記者へのメールに記した。
一方、ニュースタートはこの男性とのトラブルに関して「何度も事務所前や二神の自宅ポストに、赤字で誹謗中傷を書いた大型封筒の手紙を置かれたことがあり、今は弁護士を通してやり取りしている」と回答する。
双方の言い分は平行線をたどっており、引きこもり脱却支援が一筋縄ではいかないことは間違いない。
次ページが続きます:
【22年時点で推計146万人】
