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中東原油依存のうえ備蓄少…「ホルムズ海峡封鎖」で中国に傾くASEAN諸国に日本が示すべき第3の選択肢

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バイクの行列ができたタイのガソリンスタンド(写真:Matt Hunt/Getty Images)

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東南アジア諸国の中にはフィリピンやベトナムなど日本と同様に中東に原油を依存している国がある。しかも日本と異なり、原油の備蓄量が少ないため、ホルムズ海峡の封鎖が続く中、エネルギーショックに陥る可能性に懸念が広がっている。
新興国が集まり経済成長が続くASEAN経済はどうなるのか。現地に進出している日系企業や貿易関係が深い日本への影響はどう出るか。三菱総合研究所でマクロ経済やグローバルサウスを分析している田中嵩大研究員に聞いた。

――アメリカとイスラエルによるイラン攻撃以降、ASEANの経済やエネルギー状況はどうなっていますか。

インドネシアやマレーシアのような産油国はあるものの、中東からの原油輸入に依存している国も多い。主要国ではフィリピンが約9割でタイやベトナムも6~8割程度を中東から輸入しており影響が大きい。さらに日本と異なるのは備蓄量がフィリピンやタイが1カ月強、ベトナムは約20日と少ない点だ。

現状では大幅な生産・経済活動の下押しにつながっておらず大きな混乱は避けられている。その要因としては各国政府が燃料に対する補助金支給やガソリンに対する付加価値税の引き下げで価格を抑えているためだ。

またエネルギー消費の抑制策も打ち出されているが、対象は公的機関が主で家計や民間企業に対しては要請や努力ベースにとどまっている。各国とも在庫がある限りはまだ経済活動を著しく制限したくないようだ。

ただ、企業や家計の景況感は3月以降に大きく低下しており、消費者物価指数も主にエネルギー価格を主因に3月に上昇している。一部の石油化学製品を製造する企業では供給責任の免責を求める不可抗力宣言も出すなど、影響は生じ始めている。

ジェトロがベトナム現地の日系商社に対して行ったヒアリングでは、現在1~3カ月分の在庫で対応しているが、その後の見通しは不透明との意見も出た。

各国は原油調達先の多様化を進めているため、本格的な影響がいつ出るか明言は難しいが、楽観視できる状況ではない。エネルギー高や天然ガスなどから作られる肥料価格上昇に伴う食料価格高騰などで物価上昇が続けば、各国の金融政策にも影響する。

3月まで各国中央銀行は利下げ方向で動いてきた。供給制約による物価高なので、金融政策だけで対応するのは難しいが、インフレ抑制や通貨防衛のために利下げをやめ、場合によっては利上げに転じなければいけない。その場合、経済的にはマイナス影響が出る。

ロシアからの原油輸入が拡大

――調達先の多様化では日本もアメリカなど南北アメリカからの輸入増加を図っていますが、ASEAN各国は代替調達先をどこに求めていますか。

田中嵩大(たなか・たかひろ)/三菱総合研究所研究員。2020年東京大学経済学部卒。同年三菱総合研究所入社後、国内外のマクロ経済動向分析(日本・グローバルサウス)や国際貿易分野、エネルギー・循環分野における研究発信・政策提言に従事(写真:筆者提供)

ASEAN各国でもアメリカが候補に挙がっている。アメリカからのエネルギー輸入はトランプ大統領が求める対ASEANの貿易赤字の縮小にもつながり有効な策だと思う。ただ、輸送距離やコストなどいくつかハードルがあるとされ、どれほどアメリカからの輸入が進むか不明な点もある。

一方、足元で進んでいるのがロシアからの輸入拡大だ。ベトナムの首相は3月にモスクワに訪問し、天然ガスや原油の長期調達、ベトナム初の原子力発電所の建設協力などで話が進んだとみられる。

ロシア産原油はウクライナ戦争を受けてアメリカの制裁対象となってきたが、トランプ大統領がロシアからの調達を容認する姿勢を示しており、短期的には選択肢となり得るだろう。

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