週刊東洋経済 最新号を読む(5/16号)
東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資

関税、イラン攻撃…トランプの暴走でも揺るがない「ドルの強さ」の根源 基軸通貨の「法外な特権」の礎をなす絶対的交換性

9分で読める 会員登録で読める
強いドルの根源はどこにあるのか?(画像:chormail/PIXTA)
*2026年5月11日6:00まで無料の会員登録で全文をお読みいただけます。それ以降は有料会員限定となります。

INDEX

2025年4月のトランプ関税の宣告で世界貿易の環境が急変する中、株、債券と連動してドルが急落し、「トリプル安」は世界のドル離れの進行として報じられた。とくに国債市場の混乱にトランプも動揺したようであり、ベッセント財務長官の進言もあり、同日追加関税の発動を一時停止した。

米国債、ドルの下落は「ドル不信」を意味しない

しかしドルや国債の下落は必ずしも信認低下によるものではなかった。トランプの大統領再選に反応し、アメリカの例外主義にともなう成長期待(トランプラリー)で進行、株価を筆頭にドル資産の価格が上昇していた。ところがトランプの言動が金融拡張(レバレッジ)に冷や水を浴びせ、ベッセントが説明するように、レバレッジ解消に伴い資金繰りを目的とした国債売りが起きただけだった。ドルの下落も、そうした関連でドルヘッジを怠っていた外国投資家が急激にヘッジに走ったために起きたといえる。

一方、ドル下落に伴い金が「無国籍通貨」として安全資産のトップとして語られることがあったが、それも長続きしなかった。2026年2月28日にアメリカとイスラエルがイランへの合同空爆を始めたことで、あらゆる資産に激しい値動きが生じた。金も売られる側に回り、不確実性の継続と原油価格の一段高がいわゆる、「有事のドル買い」を進行させた。

とくにドル建て米国債は流動性が高く、リスク回避する大量マネーの受け皿となった。今回の局面で、戦争が長引きインフレ加速が財政赤字をさらに膨張させるとの懸念から、危機の時は本来値上がりする(利率は低下)はずの米国債は下落(利率は上昇)に転じた。しかしそれは他の先進国も同様の状況だったため、結局経済的な実力から米国債が安全な国の資産として選択されていった。ドルはリスク回避の逃避先(安全資産)としての地位が再確認されたのである。

地政学リスクが高まる局面でドルに勝る「安全資産」としてもて囃されてきたはずの金は、その輝きを失っている。「無国籍通貨」とされる金も、しょせんはそれ自体ドル建て取引である以上、金融市場が大混乱に陥り市場参加者がドル流動性確保へと殺到(dash for dollar)する状況では、(金投機も)追い証の発生を恐れ、ポジション整理(金の売却)を迫られる。つまり、金は中東情勢の緊迫化で債券、株式保有で膨らんだ損失をカバーするため、売却してドル流動性を確保する手段と化した。

また、金投資家は証拠金に組み入れている有価証券の価格下落で発生しうるマージンコール(追い証)を恐れ、ポジション整理(=金売却)を迫られる。そしてイラン戦争による石油価格急騰でインフレ進行が強まれば金融緩和期待は後退し、金取引の資金繰りがきつくなる。

しかも外国の金投資家にとってはドル高進行で自国通貨換算したときの投資収益が減る。もともと金は無利息資産であり、ドル高の逆風を受けやすいのである。世界的危機時の“神頼み”であったはずの金も安全通貨としては結局ドルに劣後したのだ。

もともとアメリカはエネルギー生産大国でありエネルギー価格の急騰の打撃は欧州、中国の方が大きい。これに対して、ドルに対抗するはずのユーロは石油やガスの価格高騰に連動して安くなる歴史を繰り返している。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象