たとえば京大では、2016年度前期試験で「積ん読(tsundoku)」を題材にした英作文が出題されました。会話文の空欄を埋める形式で、「積ん読とは何か」を英語で説明し、さらにそれについて自分の考えまで述べることが求められています。ぱっと見は平易です。題材も身近ですし、難解な専門語が並んでいるわけでもありません。
ところが、実際にやってみると難しい。なぜなら、日本語話者には感覚的にわかる「積ん読」という概念を、英語話者に向けて誤解なく説明しなければならないからです。
自分が使っている言葉をどれだけ正確に理解しているか
ここで問われているのは、単なる語彙力や文法力ではありません。日本独自の概念を、相手に通じる形で言い換える力です。言い換えれば、異文化間で言葉を橋渡しする力が試されています。英語ができるかどうかだけではなく、自分が使っている言葉をどれだけ正確に理解しているかまで見られているわけです。
しかも興味深いのは、この「積ん読」という言葉が、その2年後の2018年にはBBCでも紹介され、英語圏の読者に向けて「買った本を読まずに積み上げてしまうこと」を表す日本語として説明されている点です。結果から見ると、京大はかなり早い段階で、この言葉の説明可能性そのものを入試問題にしていたことになります。
東大でも、こうした「言葉の意味を説明する力」を問う問題や「ちょっとした格言の解釈」を問う問題がよく出題されます。たとえば1970年に「三日坊主」の意味を英語で簡潔に説明させる問題が出題されました。
また、2015年には「“Look before you leap.”(やる前によく考えろ)と、“He who hesitates is lost.”(躊躇っている暇があったらやれ)という相反する2つの言葉は、どちらの方があなたにとって良いアドバイスか?」というような問題が出たこともあります。
さらに印象的なのが、2003年の「雨降って地固まる」を説明させる問題です。
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【「その言葉、ちゃんとわかって使っていますか」】
