新生吹奏楽としての地域響の指導が、そのような根拠のないままでよいはずはない。今こそ感性中心の指導から脱却するために、私たち大人が再勉強して指導のあるべき姿を再考しなければいけない。
作品への審美眼の涵養やソルフェージュ等の音楽基礎要素の重要性については、すでに前述の過去記事で述べた。今回は、演奏における「身体性」のエビデンスの観点から、新たな指導のあり方について考えていきたいと思う。
エビデンスなき指導「呼吸法」の都市伝説
管楽器演奏における「呼吸法」は、さまざまな「言い伝えの宝庫」の代表格だ。その中心は「腹式呼吸」であり、長らく管楽器演奏の呼吸法の基礎として認識されている。これに関して、筆者がこれまで耳にしてきた指導の代表例は以下のとおりである。
・息を吸う際には肩を上げてはいけない
・お腹で支えて息を吐く
これらの真反対の教えもあるようで、実はいずれもきちんと系統だったメソードは確立されてはいない。管楽器界は感性や経験の積み重ねに重きをおく傾向が強いため、こうした教えの真偽については多く語られることなく都市伝説のように伝承されてきたのだ。
以下は、筆者が2023年秋にSNSを中心に管楽器の奏法に関するアンケート集計を展開し、国内のほぼ全世代2047人から得た結果の一部である。吹奏楽界の都市伝説的な指導がどのくらい普及しているのかを確認する目的で行ったものだ。

この呼吸指導の言い伝えに関する結果を見ると、1・2・3に関しては全世代を通じてかなり幅広く伝播された教えであると考えられる。しかし、実は「本当に正しい呼吸法」としてエビデンス付きで論じられているものがまったくない。
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【「呼吸法の教え」の矛盾】
