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かつてメディアを賑わせた「アグネス論争」から40年…上野千鶴子が辿りついた意外な《フェミニズムの現在地》

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男性の「男女平等」に対する考え方には誤解があったという(写真:Graphs/PIXTA)
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上野 もちろんです。だって好きでマイノリティ、つまり偏見や差別によって社会的に不利な立場に置かれるわけではないのですから。マイノリティには、その人をマイノリティにしたマジョリティがいるはずです。

弱者が弱者のままで尊重されるということ

上野 私は障がいがある人達とも関わってきました。

2016年に神奈川県相模原市の障がい者施設「津久井やまゆり園」で、入所者19人が殺された事件がありましたが、あの時に元職員であった犯人は、声を掛けても答えない人を殺したという供述をしました。

重度の障害がある人達に、声を掛けられたら立ち上がって抵抗しろと言っても無理。たとえば、DVを受けた被害者に「抵抗すればいいのに」とは言えません。そんなことをしたら、もっとひどい目に遭うことが目に見えていますから。年寄りも同じです。

そういう人達に、強者になれとか、自衛の方法を覚えろとか言っても意味がない、だから強者になりたくてもなれない人がいるということがわかります。

強者になるってどういうことなのかというと、野村浩也さんという沖縄出身の研究者がいます。

沖縄の人達は一時期、日本人になりたいと思って祖国復帰運動をしました。でも散々な目に遭ってしまったのです。復帰後世代の彼は、日本人になりたいということは、沖縄に対して、差別者、支配者、抑圧者になることだと指摘しました。

そこで、彼らの世代は、自分達のことをジャパニーズではなく、オキナワンズと称しています。それくらい日本人による差別、それに対する失望感が深いのです。

アグネス はい。

上野 障がい者の運動を見ていても、障がい者が健常者になりたいとか、あるいは弱者が強者になりたいというのは、差別からの解放にはならないということがわかってきました。それで私は、フェミニズムとは「弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想」と定義しました。

アグネス 人はそれぞれ強いところ、弱いところがあると思います。いわゆる自分は「強者」と思っている人はただの勘違いです。人を差別する人こそ、心の狭い「弱者」と私は思います。人はみんな平等、みんな生きる価値は一緒と強く思います。

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【「男女平等」に対する男性の誤解】

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