幸い、母親だけは回復しました。子どもたちより体力があったのでしょう。
最初は人に慣れず、ずいぶんと警戒されましたが、世話を続けるうちに少しずつコミュニケーションがとれるようになり、やがてぼくに甘えるようにもなりました。チンゲンサイが大好物で、与えると喜んで頬張っていた姿を、今でもよく覚えています。
その母モルモットは、ぼくが大学2年生の頃、乳腺のあたりにしこりができ、翌年に亡くなりました。しこりはどんどん大きくなっていきましたが、何もできませんでした。あのときの日々募っていく無力感を、今でもはっきり思い出せます。
しこりの切除手術ができる動物病院を探しましたが見つからず、当時のぼくはまだ学生だったので、正確な死因を突き止めることもできませんでした。
おそらく乳腺腫瘍、つまり乳がんだったのでしょうが、今となっては確かめる術がありません。
出会ったときから最期まで、わが家のモルモットには「何もしてやれなかった」という思いがあります。そのため、ぼくはモルモットの病理診断に、どうしても特別な思いを抱いてしまうのです。
「単なるけが」と思っていたら
数年前、5歳のオスのモルモットを病理解剖したときのこと。
ペットとしてかわいがっていたモルモットの足の付け根が腫れて膿んでいることに気づいた飼い主さんは、「けがをしたのだろう」と考え、市販されている人間用の抗菌薬が入った塗り薬を使って様子を見ていたそうです。
しかし、腫れも膿もよくならず、モルモットは1カ月後に死んでしまいました。
飼い主さんはモルモットの病死について調べるうちにぼくのブログを見つけ、「本当の死因を知りたい」と連絡をくださいました。
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【20年経っても消えない後悔】
