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「右派も左派も"脳内の敵"を叩いているだけ」小泉悠×辻愛沙子対談(後編)日本人が無自覚にハマる"言論の軍拡競争"とは

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小泉氏と辻氏の対談の様子
若い世代が抱く「情報戦」の素朴な疑問について、辻愛沙子氏と小泉悠氏が語り合った(撮影:今井康一)
  • 小泉 悠 東京大学先端科学技術研究センター 准教授
  • 辻 愛沙子 arca代表取締役/クリエイティブディレクター
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小泉:そうですね、Xは長い時間をかけて若干の自浄作用が働く場になってきたかもしれません。でも、最近のXは「今日のあなたが怒るべきもの」をどんどん提案してきて、感情を逆撫でするような情報ばかり流れてくるので、僕は少し距離を置いています。SNSの年齢層も変わりましたよね。Facebookは完全に上の世代のコミュニティになり、Xも年齢層が上がっている。今の10代や20代は、どのSNSをやっているんですか?

:BeReal(ビーリアル)などですね。通知が来たタイミングで日常の写真を撮ってシェアするだけなので、時事ネタも流れてこない平和な世界です。

ただ、そうなってくると今度は、社会問題に全く興味関心を持たない「無関心層」になってしまう危うさもあります。きれいな言葉だけを信じてしまったり、ポピュリズムに流れやすくなってしまう。だからこそ、疑いの目を持ちつつ、情報の濁流の中を自ら泳ぐ覚悟を持つという方がいいのかなという気がしています。

「安全保障のジレンマ」に陥る言論競争

小泉:でも、人間が政治に向き合う場が絶対にSNSである必要はないんですよね。SNSは本当に写真をシェアするだけの場所にして、政治の議論は別の場所でやったっていいわけですから。

:現実問題として、SNS上で「あっちの陣営の言論ばっかり増えるとまずいから、こっち側も声を大きくして増やそう」というやり合いがずっと続いてしまっていますよね。

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小泉:それってまさに「軍拡競争のスパイラル」ですよね。皮肉なものです。国際政治学には「安全保障のジレンマ」という言葉があります。自国を守るために軍備を増強すると、相手国も脅威を感じて軍備を増強し、結果的にお互いの安全が低下してしまうというパラドックスです。今のSNS空間では、右派も左派もまさにこの安全保障のジレンマにからめとられているのではないでしょうか。お互いがお互いの「脳内の敵」を叩き合い、言論の軍拡競争に陥っている。

だからこそ、今日のように立場の違う者同士が実際に対話し、急がずに情報を検証し、測定可能な言葉で政策を語り合うこと。それが、情報自体の不確実性が増してきている時代で、基礎となっていくものなのだと思います。

(前編はこちら

(構成:中山真季/川村浩毅)

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