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右派と左派は何が違う?「日本への愛着」「伝統を重視」現代日本で何が"右"とみなされるか

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旭日旗
「右派」「左派」という言葉の定義について、あらためて考えます(写真:マノリ / PIXTA)
  • 松谷 満 中京大学 現代社会学部 教授
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さらに、こうした考え方を否定する立場への強い反発も「右」とみなされます。「反日」という言葉が好んで用いられ、徹底した批判の対象となります。とくに、国内の左派や日本の歴史認識を批判する近隣諸国に対して用いられます。

伝統を重視するかどうか
『「右派市民」と日本政治 愛国・排外・反リベラルの論理』(朝日新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

もう一つは「伝統」に関することです。伝統を維持しようとする試みのすべてが「右」とみなされるわけではありません。たとえば、伝統芸能を保存する会を右派といったりはしません。主に伝統的とされる家族関係・セクシュアリティなどが過去の理想形として想定され、ジェンダー間の平等、性的マイノリティの権利といった近年の考え方に強く反発するのが右派です。個人の権利が等しく与えられることは、むしろ不自然であり社会に混乱をもたらすとの主張がなされます。個人よりも伝統的(とされる)規範を重視するので、反個人主義とまとめてもよいかもしれません。

個人の権利よりも伝統的な社会規範を重視する考え方

現代の日本で「右」とされるのはだいたいこのような主張です。経済的な左右対立もありますが、ほとんどの場合、社会文化的な側面を指します。そして、こうした主張を唱えがちな人物・団体、もしくは、そうした人々が多くいる団体・組織が「右派」と名指されます。

いま一度、表に整理してみました。かなり図式的なものなので、これですべてを明快に整理したとはいえません。あくまでも便宜的に理解するためのものと考えてください。

右派とは何か(画像:筆者提供)

現代日本社会における右派は、基本的には過去志向だといえます。これは日本に限ったことではありません。トランプのキャッチフレーズは「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」です。ヨーロッパの極右政党も往々にして過去の自国の偉大な時代を強調します。

伝統的な家族関係などに対する愛着もまた過去志向の表れといえますが、個人の平等を重視するかどうかに焦点をあてたボッビオの定義とも関連づけられます。個人の権利よりも伝統的な社会規範を重視する考え方です。

以上をふまえ、本書の定義をあらためて明確に整理しましょう。

①本書における右派とは、国や伝統をことさらに重視する考え方、そうした主張をする人物や団体を指します。
②「国」を重視するとは、過去のある時点における「日本」に対する強い愛着を意味します。その愛着は「強い国」を求めることにつながります。
③「伝統」を重視するとは、特定の伝統的(とされる)社会規範に対する強い愛着を意味します。特定の家族関係・セクシュアリティなどを自然状態とみなし、個人の権利の不平等は容認します。
④そこから派生して、国や伝統を軽視するようにみえる人たちへの強い反発も、右派の特徴といえます。
*1 中井遼『ナショナリズムと政治意識 「右」「左」の思い込みを解く』(光文社新書、2024年)では、大規模な国際比較調査のデータから国・地域による多様なあり方が詳細に示されています。世代による違いについては、遠藤晶久、ウィリー・ジョウ『イデオロギーと日本政治 世代で異なる「保守」と「革新」』(新泉社、2019年)がよく参照されます。
*2 ここでは、以下の本を主に参考にしました。小熊英二・樋口直人編『日本は「右傾化」したのか』(慶應義塾大学出版会、2020年)、田辺俊介編著『日本人は右傾化したのか データ分析で実像を読み解く』(勁草書房、2019年)、塚田穂高編著『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書、2017年)
*3 ただし、「領土」へのこだわりは右派の専売特許というわけでは必ずしもありません。日本共産党は、北方領土や尖閣諸島については、大国の覇権主義を許さず毅然と対応すべきとの立場です。
*4 ここで詳しく論じる余裕はありませんが、左派が過去と現在を結びつけ、「再軍備」「戦前回帰」といった枠組みで改憲・軍事力強化を批判することへの反発があるのかもしれません。つまり、過去と現在をセットで否定されるがゆえに、右派はセットで肯定せざるをえないという可能性です。この点は、梶原麻衣子『「“右翼”雑誌」の舞台裏』(星海社新書、2024年)から示唆を得ました。

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