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AI時代のデータセンターは「冷やす能力」がカギを握る。次世代インフラの核心とは何か?

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データセンター
冷却設備はデータセンターの安定稼働に欠かせない(写真はイメージ)
  • ダイキン工業 制作:東洋経済ブランドスタジオ
クラウドの利用拡大やAIの普及を背景に、今、世界中でデータセンター需要が急激に拡大している。だが、その成長の陰で、見過ごせない課題が一段と深刻さを増している。それが、サーバーが生み出す強烈な「熱」だ。膨大なデータを高速で処理する半導体を搭載したサーバーは、稼働時に大量の電力を消費するとともに、高い発熱を伴う。しかもAI半導体の登場・進化によって、ここ2~3年のうちに消費電力はさらに増大し、発熱量も10倍~数十倍に急増するとの予測もある。そんな社会インフラともいえるデータセンターで、いま強く求められているのが、この「熱」を確実に制御する冷却設備だ。止まることなく稼働し続けるデータセンターの裏側に迫った。

AI普及を背景に急拡大するデータセンター、空調メーカーの役割が増大している

さまざまなものがインターネットにつながる社会を陰で支えているのが、24時間365日止まることなく稼働し、膨大なデータを処理し続けているデータセンターである。今やその安定稼働は、社会の基盤そのものを支える条件になっている。

デジタル社会の進展に伴い、データセンターの需要は爆発的に高まっている。

その流れをさらに加速させているのが、AIの普及だ。単なるインターネット検索とは異なり、自律的に学習するAIはより大量のデータを高速で処理する。そのためGPU(画像処理半導体)を搭載した高性能サーバーの開発も急速に進んでいる。近年、AIに特化したAIデータセンターの新設が相次いでおり、巨大IT企業が数兆円規模の投資を計画しているケースもあるという。

データセンターの需要が急増する一方で、課題も浮き彫りになっている。それが安定稼働に不可欠な冷却設備だ。AI時代のデータセンターでは、もはや「冷やす力」そのものが競争力になりつつある。

この課題の解決に挑戦しているのが、家庭用やビル用エアコンの業界でグローバルに展開する空調専業メーカー、ダイキンである。「アプライド」と呼ばれる、ビルよりも大型の空調機を扱う、ダイキン アプライド・ソリューション事業本部の桑原智美氏は冷却設備が必要な理由をこう解説する。「サーバーに搭載された半導体は、電気が流れると発熱します。しかしサーバーは熱に弱く、許容を超える熱がこもれば、性能低下や故障、停止につながりかねません。そのためデータセンターには、電力消費に伴って発生する熱を、絶えず安定して冷やし続ける設備が欠かせないのです」

桑原 智美 氏
アプライド・ソリューション事業本部 事業推進グループ

「GPUが高性能化する中で、サーバーに搭載されるGPUが消費する電力量は雪だるま式に増えており、それに伴い発熱量も増大しています。これまでサーバー1ラック当たり約15kWだった発熱量が、最新のAIサーバーでは、150~200kWと、およそ10倍に増加しています。さらに2028年ごろには、発熱量が約600kW以上に達するとの予測もあります。これを1000wを消費する電子レンジに例えると、これまでは1ラックに15台分だったものが600台分にまで膨れ上がるイメージです」(桑原氏)。わずか数年で、これほど急激に発熱量が増えれば、冷却機能の強化が避けられないのは当然だ。

出所 ダイキン工業

「サーバーの冷却に必要な電力が増える一方、そこに電力を割きすぎると、メインであるサーバーが消費する電力にも影響を及ぼしかねません。データセンター全体で確保している電力量の中で、サーバー、冷却、必要な周辺設備などの使用量のバランスをとる必要があります。あくまでもメインはサーバーの安定稼働ですから、冷却設備には、冷却能力を高めながらも、省電力で高い信頼性を維持することが求められます」と桑原氏は話す。

「求められる設計仕様は千差万別」冷却技術領域でダイキンの戦略が加速する

発熱量が増えれば、サーバー内部の温度が上昇し、性能低下や停止のリスクが一気に高まる。もしサーバーがダウンすれば、社会の機能そのものに深刻な影響を与えかねない。冷却設備は、デジタル社会を支える生命線の1つといっても過言ではない。

「従来は、サーバールームに空調設備を設置し、大空間全体を冷却する方法が主流でした。しかし、さらなる発熱量の増加に対応するため、サーバーラックにも冷却設備を取り付け、ラック単位で冷却する方法と組み合わせるケースも増えています。さらに最近では、半導体チップに冷却液が流れる金属板を密着させ、チップを直接冷却する方法も登場しています」(桑原氏)

出所 ダイキン工業

「データセンターによって、サーバーのスペックや熱負荷は異なり、求められる設計仕様は千差万別です。また立地や気候条件によっても、冷却設備に求められる水準は変わります。3つの冷却技術をうまく組み合わせることで、そうしたお客様ごとの条件・ニーズにきめ細かく応え、最適な冷却ソリューションを提供していくことができます」と桑原氏は強調する。

中でも、発熱量の激増に対応するため、買収によってラインナップに加えた液冷方式は、これまでの冷却方式とはまったく異なる注目の新技術だ。「液冷方式は熱伝導率が高く、冷却能力を大きく引き上げられます。一方で、水に弱いサーバー内に液体を持ち込むことは、液漏れの可能性を伴う重大なリスク要因でもあります。半導体にとって水は大敵だからです。買収したチルダイン社の負圧方式の液体冷却システムは、サーバールーム内での液漏れのリスクを低減しながら、チップレベルでの冷却を可能にします。そこに強みを見いだしました」と、桑原氏は説明する。

負圧方式の液体冷却システム

大空間冷却、サーバー冷却、チップ直接冷却という代表的な3つの冷却技術にダイキンの持つ量産技術やノウハウを組み合わせることで、包括的な冷却ソリューションを提供できる点が大きなアドバンテージになる。

IT社会のインフラを守り、社会課題の解決にも貢献する

現在、データセンターの建設需要が急増しているのはAI開発競争が激しい北米だ。データセンターに関わるプレーヤー、技術、ビジネスの多くが集中しており、当面は北米が市場拡大を牽引するとみられ、ダイキンは北米データセンター冷却事業のさらなる進化と成長を見据えている。「大空間冷却、サーバー冷却、チップ直接冷却という強力な技術をそろえたことで、これからは相互のシナジー効果にも期待しています。大規模データセンターやAIデータセンターを建設されるお客様に、圧倒的な省エネ冷却ソリューションを提供していくことが目下の目標です」と同事業本部 副本部長の施 鋒氏は語る。

施 鋒 氏
アプライド・ソリューション事業本部 副本部長 事業戦略担当

2026年5月に発表された新たな戦略経営計画「FUSION30」でも、データセンター事業は、同社の成長を強力に推進する注力事業の1つに位置づけられている。「データセンター市場はまさに成長のただ中にあり、技術開発も破竹の勢いで進んでいますが、やがて標準化が進んでいくでしょう。そのときに、ダイキンの強みであるサービス体制も含めた冷却の標準システムを担うリーディングカンパニーとなっていたいと考えています」と、施氏は高い目標を掲げる。

「デジタル社会において、データセンターは今や最重要インフラの1つになっています。その安全・安心な運用を支えることは、極めて重要な社会課題です。今後も、データセンターへの冷却ソリューションの提供を通じて、事業拡大はもちろん、何よりも社会課題に対して『空気で答え』を出していきたいと思います」と力を込めた。