新しいコミュニティでの活動を通じて、遠藤さんは生涯のパートナーとなる、14歳年下の男性と出会う。
年齢差もあり、当初は恋愛対象として見ていなかったという。だが、彼は粘り強かった。
三度のプロポーズを経て、遠藤さんは結婚を決める。
結婚式には、コミュニティで出会った仲間たちや、行きつけの飲み屋の友人たちなど、総勢150名ほどが集まった。かつて「東京に友達がいない」と語っていた女性の晴れ舞台に、これだけの人が集まったのである。
そして、さらに驚く出来事があった。
最近になって、父親から思いがけない提案を受けたのだ。
「自分の薬局を開業してみないか。出資する」
現在は、M&Aで承継可能な薬局を探しているという。コミュニティ活動で培ってきたコミュニケーション力や人脈が、ここで生き始めている。
「10年前の私だったら、絶対に無理だったと思います」
知識も、人脈も、交渉力もなかった。
遠回りだったのかもしれない。それでも、その時間は確実に彼女を鍛えていた。
「準備ができたところに師は現れる」とは、よく言ったものだ。
人生は、直線ではない。
ネットワークビジネスで苦しんでいる人へ
失った1800万円について、インタビューの終盤、改めてその事実についてどう思うのか、率直に聞いてみた。
「確かに、そのお金があれば別のこともできたと思います。でも、あの時間があったから今の人間関係や経験があるので、全部が無駄だったとは思っていません」
その言葉に、嘘はないのだろう。なぜなら遠藤さんが求めていたものは、最初から最後まで「お金」ではなく、「居場所」だったからだ。
それほどまでに、彼女はこの“東京砂漠”の中で強烈な寂しさを抱えていたとも言える。
しかしネットワークビジネスは、本来は仕事や人脈を広げるための「手段」だ。
ところが遠藤さんは、その場所そのものが「目的」になってしまっていた。手段と目的が、いつの間にか入れ替わっていた。それが遠藤さんが犯した最大の失敗だ。
もし今、ネットワークビジネスの中で苦しんでいる人がいるなら、一度自分の心に問いかけてみてほしい。
自分はいま、仕事のためにそこにいるのか。それとも、そこを離れることが怖くてとどまり続けているのか。
そこで学んだことや、培った人脈は、きっとこれからの人生のどこかで生きてくるはずだ。
それは、遠藤さんの歩んできた時間が教えてくれている。
だからもし、そこに居続けることに違和感を覚えているのなら、それは一度大きく立ち止まってみるタイミングなのかもしれない。
