当然ながら、島根へ帰省する費用も捻出できず、遠藤さんは次第に実家へ帰らなくなっていった。家族に心配をかけたくないという思いから、ネットワークビジネスをしていることも伏せていた。
その結果、仲の良かった家族とも、ほとんど連絡を取らなくなり、妹からは「家族を捨てるなんて!」と強く責められたこともあったという。
そうした日々のなかで、ストレスは限界に達していったのだろう。今思い出しても怖いという、こんな出来事があった。
「シャワーを浴びていたら、髪の毛がバサッと落ちたんです。後から、円形脱毛症になっていたことがわかりました」
金融機関の借入れに手を出し始める
遠藤さんは入会当初、ネットワークビジネスの活動費は、貯金と本業の収入でなんとか回していた。
だが、思うように収入が伸びないまま、数カ月、そして1年と時間が過ぎていくにつれ、生活は次第に切り詰められていった。
家賃を抑えるためシェアハウスに移り住み、カバンの紐は切れるたびに縫い直す。靴は底が剥がれるまで履き続け、昼食はネットワークビジネスで扱っていたプロテインとゆで卵だけで済ませる日もあった。
「少しずつ収入も増えていたし、このまま毎日人に会って受講生を増やせば、この先行投資は必ず回収できると信じていました」
しかし、現実は思うようには進まない。
ついに資金が回らなくなり、遠藤さんは休日に別の薬局でアルバイトを始めた。それでも、毎月およそ25万円にのぼる活動費を賄いきれなくなる
そしてついに、金融機関からの借り入れに手を出し始めた。
この生活は、6年間続くことになる。
結果として、失った金額は約1800万円にのぼった。
遠藤さん自身は、当時の日々を「地獄のようだった」と振り返る。
「なら、なぜ辞めなかったのか」当然、誰もがそう疑問に思うだろう。
先に結論を述べてしまえば、当時の団体内には、「洗脳」と言っても差し支えない構造があったことは否めない。
だが、遠藤さんの話を深く聞いていくと、そこにはもうひとつ、「別の輪郭」も浮かび上がってきた。
