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増えていった崩落、崩壊の記述 「声なき声」を聞いて言葉にした書き手/幸田文『木』を読む(下)

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『木』幸田 文 著
幸田 文『木』/新潮文庫

「樹木から感動をもらいたい」と67歳で始めた『木』の連載中、幸田文が「強いショック」を受ける出来事があった。

「巨大な崩壊が、正面の山嶺から麓へかけてずっとなだれひろがっていた。〔…〕無惨であり、近づきがたい畏怖があり、しかもいうにいわれぬ悲愁感が沈澱していた」(『崩れ』)

「崩れ」は、「この国の背負っている宿命」

ビジネスに効く名著のエッセンスを識者がコンパクトに解説する。【原則土曜日更新】

静岡と山梨の県境、大谷嶺の山頂からふもとにかけてのおよそ1.8k㎡の崩落痕。日本3大崩れの1つ、大谷崩れである。

これに先立つ1963年、文は新潟県松之山町の「浦田大地すべり」被災地を歩いている。惨状を「書いて伝えなければいけない」と痛感するも、「書く力量がなかった」。十余年を経て大谷崩れと出合ったことで思いが再燃したのか、『木』には樹木そのものよりも崩落、崩壊の記述が増えていき、ついには76年、その名も『崩れ』と題した連載が始まる。

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