首都圏729駅で始まったクレカ乗車、IC化率98%の現実と「改札外乗換」が阻んだ普及の壁とは
バス事業者が鉄道より先に動く背景には、運賃箱の運用コストや運転士の負担軽減という切実な課題がある。鉄道各社が「ICカードが主軸」と慎重な姿勢を見せる中、バスは完全キャッシュレス化へ舵を切っている。
クレカ乗車は何を変えるのか
会見で印象的だったのは、伊藤氏が語った鉄道事業者間の連携の歴史だ。自動改札機、自動券売機、プリペイドカードのパスネット、そしてICカード。「お客様の移動体験をより便利にするため、共通の課題を共有し、技術や仕様をすり合わせてきた成果」だという。クレカ乗車もその延長線上にある。
ただし、現時点でのクレカ乗車には制約もある。対応改札機は各駅1~2台にとどまり、ICカードより処理速度が遅い。ラッシュ時に改札が詰まる原因になりかねない。定期券との併用は不可で、11社局のエリア外への乗り越しもできない。エリア外に出てしまうと入場記録の処理が面倒な手続きになる。子供運賃の設定もなく、小児がクレジットカードで乗れば大人運賃が適用される。
それでも、大手町駅からクレカ1枚で箱根湯本まで行ける、羽田空港から日光まで乗り継げるといった使い方は、訪日外国人や普段ICカードを持ち歩かない層には確かに便利だ。券売機の前で路線図を見上げる外国人観光客の列が減れば、駅員の負担軽減にもつながる。
クレカ乗車は交通系ICカードを「駆逐」するものではなく、インバウンド対応と磁気券(紙の切符)の削減を担う手段として位置づけるのが、現場の温度感に近い。東京メトロの小川氏が会見の最後に述べた「ICカードを主軸と位置づけたうえで、多様なお客さまに快適な乗車体験を提供する」という言葉が、11社局の共通認識だろう。
首都圏729駅でクレカ乗車がつながった日、改札の風景はまだほとんど変わっていない。対応改札機は端の1台だけ、利用者の大半はいつも通りICカードをかざして通り過ぎていく。それでも、券売機の前で立ち止まる人が1人減り、2人減りしていく変化は、静かに始まっている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら





















無料会員登録はこちら
ログインはこちら