その際も、頭ごなしに注意するのではなく、「こう見えるんだけど、あなたはどう思う?」と問いかけ、その子の意見や考えを全部聞くことを心がけているという。
それでも「校則違反しているという証拠はあるんですか」「先生がそう思っただけでしょ?」「なんで私ばっかり!」と言われてしまう。
埒が開かないので管理職に相談をすると、たいていは「まあ、証拠がなければなんとも言えないね」とうやむやにされてしまう。
「生徒が『やっていない』と言えばそれが通ってしまう。現場の教員が校則を守るよう指導しても、それをハラスメント扱いする保護者や、校則の遵守よりも揉め事を起こさないようにする管理職。それを感じ取って、生徒はゴネ得を学ぶわけです」
親が嘘をついて子をかばうことが教育か?
坂本さんにとって忘れられない出来事がある。一人の女子生徒が夏休み明けに髪を染めていた。頭頂部だけが黒く、その下が明るい茶色になっている、いわゆるプリン状態だ。数名の生徒からも「染めたと本人が言っていた」という報告があった。
しかし、生徒は「染めてはいない。ずっと屋外で部活動をしていたから髪も日焼けしただけだ」と頑として認めない。結局、保護者も交えて話し合うことになった。そこで保護者は全面対決の姿勢を見せたという。
「主観だけでものを言うな。この子は染めていないと言っている」
「先生に『染めている』と疑われて本人は落ち込んでいる」
プリン状態の我が子の髪の毛を前にした保護者の言い分は、どう見ても苦しい言い訳でしかなかった。
「この保護者は、我が子を本当に信じきっているのかもしれませんが、染めたとわかっていて、子どもをかばうために苦しい言い訳をしているように見えました。もし後者であれば、我が子のためなら嘘もつく親の姿を見せることが教育だと思っているのでしょうか。私はその点が一番気になりました。
生徒には普段から『間違ってもいいし、失敗してもいい。それを素直に認める方が大事だよ』と伝えていますが、伝わらなかったんだなと。
嘘をついて切り抜けようとする生徒もよくないですが、それを肯定する保護者が増えていることの方が問題だと感じています」
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【現場の教員と管理職の間の温度差】
