アメリカ民主党が「労働者」から見限られた決定的な瞬間 トランプ台頭を招いたオバマの「庶民を見捨てた」決定的失策とは
一方で、住宅ローンの支払いに苦しむ一般市民への対応は極めて冷淡だった。
2009年、住宅差し押さえ件数は過去最高の282万件に達し、全住宅の23%にあたる1070万戸が、住宅の市場価値よりも高いローンを抱える「水面下(underwater)」の状態に陥っていた。
政権は差し押さえの危機にある人々を支援するプログラムを導入したが、銀行側が申請処理に消極的だったこともあり、初年度に救済を受けられたのは危機にある世帯の10%未満にとどまった。
「ウォールストリートの味方であり、メインストリートの側には立っていない」という強烈な印象が国民の間に広がり、これが右派の政治運動へと結実する政治的空白を生み出した。
そして、その空白を埋めたのが、政府の救済策や過剰な支出に反対して誕生した「ティーパーティー」運動だったのである。
「偽装された福祉」として反感を買ったオバマケア
労働者階級の民主党離れを決定的にしたもう一つの要因が、オバマ政権の看板政策である「医療保険制度改革(通称オバマケア)」である。
この法案は、国民皆保険を目指すという崇高な理念を持っていたが、その制度設計は極めて複雑で、民間の保険会社や雇用主提供型の保険を維持しつつ、無保険者に保険購入を義務付けるという妥協の産物であった。
法案の成立には、保険業界の反発を避けるため、「公的選択肢(政府提供の保険)」などの人気のある要素が削ぎ落とされた。
2010年3月に同法が成立すると、オバマは「これこそが変革の姿だ」と歓喜した。
しかし、一般有権者の受け止め方は全く異なっていた。
保険購入のための補助金は年収約4万6000ドルまでの世帯にしか支給されず、それ以上の収入がある中間層や労働者階級は、市場で民間保険会社が設定する高い保険料をそのまま支払わなければならなかった。
さらに、法案には10年間で7160億ドルのメディケア(高齢者向け医療保険)削減が盛り込まれていたため、高齢者層からも強い反発を招いた。
多くの労働者階級や高齢者にとって、オバマケアは「低所得者への補助金を自分たちが負担させられる、偽装された福祉法案」と映ったのである。
かつてビル・クリントンが解消しようとした労働者階級の「福祉への反感」を、オバマと民主党は自らの手で再燃させてしまったのだ。




















