SNS人気の裏で…「コツメカワウソ」の知られざる最期――解剖した飼育個体ほぼ100%に見られた"自然界にない亡くなり方"

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解剖してみると、案の定、腎臓には多くの結石ができていました。さらに全身の組織を調べ、得られた所見を総合し、死因は「腎結石に由来する腎不全」と診断しました。

園のスタッフの方々もできるかぎりの努力をしていたのでしょうが、冬の寒さで水を飲む量が減り、腎結石を急激に悪化させた可能性が考えられました。

ところで、カワウソの腎臓は表面に複数の切れ込みが入っており、ブドウの房のような形をしています。1つひとつのブドウの実のような部分は、それぞれが独立した腎臓のようになっていて、これをたくさんの葉が集まった植物になぞらえて「葉状腎」といいます。

葉状腎では、複数ある小さな腎臓のうち、いくつかに結石ができても、ほかの部分で機能を補うことができ、これが腎結石のできやすいカワウソの体では有利に働くといわれています。

ただ、人間に飼われているカワウソでは、葉状腎でもカバーしきれないほど、腎結石が悪化するのです。このとき病理解剖したコツメカワウソも、葉状腎のかなりの部分が結石に冒されていました。

手術で切除するのも難しい

解剖の間、ぼくは獣医師さんに病変を1つひとつ説明しながら、今後どうすれば腎結石を予防・治療できるかを話し合いました。残念ながら、人間の飼育下にあるコツメカワウソでほぼ100%見つかる腎結石は、予防も治療も、いまだ決め手はありません。

膀胱内に石がたまる膀胱結石でしたら、手術で取り除くことも可能です。ただ、コツメカワウソで膀胱結石が見られる場合、たいてい腎結石も併発しています。

葉状腎という特殊な構造の腎臓の中に結石が散在しているため、腎機能を保ちながら腎結石だけを安全に取り除くことは困難であり、手術によって根治することは非常に難しいのが現状です。

それでも、できるだけ早い段階で腎結石を見つけ、飲み水や餌を工夫することで、今後、長く生きられる個体が増える可能性はあります。

病理診断の結果を報告すると、彼女からは「この結果は飼育員とも共有し、ほかの子の飼育に生かしていきます」という言葉が返ってきました。

この獣医師さんはたいへん勉強熱心で、コツメカワウソ以外にも、ペンギンやカピバラ、ウミガメ、オオサンショウウオなど、園で動物が亡くなるたびに病理診断を依頼してくれます。

病理解剖にも頻繁に立ち会い、たくさん質問をし、結果を飼育員とも共有する。その姿勢からは、死んでしまった動物から少しでも多くを学ぼうとする強い意志が伝わってきます。

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