つぶらな眼、小さな耳、丸みのある頭、器用に動く前足。そこにキューキューという鳴き声まで加われば、「家で飼いたい」と思う人がいても不思議ではありません。
しかし、その愛らしい表情やしぐさの裏で、人間に飼われているある程度の年齢のコツメカワウソの大半が、「腎結石」という深刻な病気を抱えています。
動物の死因を究明する獣医病理医として、ぼくはこれまでに動物園などからの依頼で数十体のコツメカワウソを病理解剖してきました。臓器だけの病理診断も合わせると、60体ほどを診てきたでしょうか。
非常に気になっていることがあります。ぼくがこれまで診てきた遺体のほぼ100%に、腎結石が見つかっているのです。死因として多いのも腎結石から腎不全に至ったケースです。最近では高齢化が進んでいて、がんも増えてきています。
海外の報告によれば、野生の個体で腎結石が見つかる確率は数%にも満たないそうです。つまり、コツメカワウソは人間に飼育されることで、何らかの原因で腎結石ができているのです。
動物園や水族館のように、専門の飼育員や獣医師が丁寧に飼育環境や健康を管理している施設であっても、コツメカワウソの腎結石を防ぐことはできません。まして、一般家庭ではなおさらです。
工夫して水を飲ませていたが…
ある年の12月、動物園で亡くなった14歳のオスのコツメカワウソについて、病理解剖を依頼されました。
依頼してきたのは、その動物園で働く若手の女性獣医師でした。最初に彼女が、「まだ経験が浅いので、病理解剖を通じてこの子の死因を知り、学びたい」と話してくれたことが、強く印象に残っています。
そのコツメカワウソは、動物園の定期健康診断で、生前から腎結石を抱えていることがわかっていました。
園では、定期的にレントゲン検査をして結石の経過観察をしつつ、水辺の環境を整え、水が飲みやすいように給水器を改良し、餌にも水分を含ませたりするなど、少しでも多く水分を摂れるよう工夫していたといいます。
「十分に水分を摂れば、結石の成長を抑制できるかもしれない」ということで、できるかぎりの管理はしていたのだと思います。
しかし、その12月、そのコツメカワウソは突然食欲が落ち、そのまま亡くなってしまいました。このときは、ぼくが動物園に出向き、依頼主である獣医師さんと一緒に病理解剖を行いました。




















