電話口の母親は号泣していた—「育児119」に届く切実なSOS、父親からの相談も 「孤独な子育てをなくしたい」代表の思い

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ところが自分自身が実際に結婚し、子どもが生まれると、つい職場の付き合いで飲み歩いて妻に連絡をしない、といった“失敗”をしてしまう。

初めて娘を連れて外食した際、自分が待望のラーメンを食べる横で、妻は子どもに食べさせた後の伸びきったうどんを食べていることに気づいた。「その姿を見て、僕は全然わかっていない、と反省しました」。

石黒和希代表
自身も2児の父親である(撮影:今 祥雄)

数多くの相談を受け、心理学なども研究してきた石黒代表。男性は家事や育児に苦手意識を抱き、家に帰れば妻が「やってくれるだろう」と甘えがちなこと、一方で妻は自分のやり方に固執しがちなことを指摘する。

そして、妻側も言いたいことがたくさんあるのはわかったうえで、「5分でいいから、パパの話を聞いてあげて」とアドバイスしているという。

男性は気持ちの言語化が苦手な傾向があるため、「パパに、『今、家庭のこと、私について、子どものこと、仕事のことでもいい。何か悩んでいること、したいこと、ほんとはこうだった。そういった気持ち、ある?』と冷静に聞く時間を作る。

聞くに徹する時間を定期的に持つうち、最終的にはパパから感謝の言葉が出て、自発的に動いてくれるようになることが多いんです」と話す。実践した女性たちから、そうした夫の変化を喜ぶ声も届くそうだ。

また、妻たちも夫に話したいことを紙に書いておき、本人の前で読み上げるとよいとアドバイスする。書くことで、気持ちも整理できる。

夫婦だから「察する」だけではすれ違いも

石黒代表はもう1つ、気になる問題を挙げていた。

女性に夫の話を聞くよう提案するのは、そもそも向き合う機会をつくるカップルがとても少ないからだ。「多分こうなんだろう」と推測して動くが、きちんと聞かなければ本当の気持ちはわからない。

悪循環を断ち切るためにも、短時間でいいから話し合う時間が必要だと主張する石黒代表。「察する」美徳が強調されがちな日本では、向き合うことを避ける傾向が強い。

しかし、推測は結局のところ想像でしかなく、実際とは違う場合が往々にしてある。さえぎらずに相手の話を聞く5分間は、家族の絆を深める大切な積み重ねの時間ではないだろうか。

育児119
育児119は、子育てに関する不安や悩みを相談する場にもなっている(撮影:今 祥雄)

そして、社会の側は教育の不足も切実だ。自分の子どもが生まれて初めて、赤ちゃんを抱くという親が珍しくなくなった今、進んだ科学の知識も活用し、育児を学ぶ時間は学校でも地域でも、切実に必要とされているのではないだろうか。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。

女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『おいしい食の流行史』(青幻舎)『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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