関西でおなじみ「アラ!」の会社が貫く「ブレない」経営哲学《小さな弁当店も老舗も原料の未来も》「大切なもの」を守り抜く

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関東において海苔つくだ煮の代名詞が桃屋の「江戸むらさき ごはんですよ!」であるならば、関西においてのそれは間違いなくブンセンの「アラ!」である。お茶の間のソウルフードとして、圧倒的なシェアと認知度を誇る。

ベーシックな青色の瓶の「アラ!」
ベーシックな青色の瓶の「アラ!」だけで年間約100万個以上を出荷。「アラ!」でなければ、という人も多い(写真:筆者撮影)

そのブンセンが、近年大きな挑戦で食品業界の注目を集めている。2024年、約40億円の負債を抱えて経営破綻した京都の老舗「野村佃煮」を子会社化するという大きな決断を下した。

さらには、自社の根幹を支える海苔の未来を守るため、あおさのりの陸上養殖にも着手。前例のない取り組みに参画し、世界で初めて実現した。

なぜ地方の中小企業であるブンセンが、大きなリスクを背負い、守りと攻めの両方で挑戦し続けるのだろうか。

負債40億の老舗を異例の速さでM&A

「野村佃煮/民事再生法申請、負債計40億円」

2024年2月13日午後、一本の速報が届く。

ブンセン総務兼経理部長の髙島宏明さん(以下、髙島さん)は、目を疑う。すぐに代表取締役田中智樹社長(以下、田中社長)と会長へ電話をいれた。

「衝撃でしたね。ちょうど4日前の9日に、広島の会合で野村社長にお会いしたばかりでしたから」(田中社長)

ブンセン代表取締役社長の田中智樹さん
インタビューに応じる、ブンセン代表取締役社長の田中智樹さん(写真:筆者撮影)

野村佃煮は1931年創業。「京佃煮」ブランドを築き、山椒昆布やちりめん山椒で知られる老舗だ。冷凍おせちの分野でも先駆的な技術を持っていたが、市場縮小と原材料高騰の影響を受け、負債は関係会社を含め約40億円に膨らんでいた。

田中社長は、ほどなく京都へ向かった。おせち商品の取引は、まもなく3月から動き出す。再建の見通しが立たなければ、取引先は離れ、ブランドの毀損(きそん)は避けられない。一刻の猶予もなかった。

「事業も従業員も、どうにか続けていきたい」。田中社長は、現場の切実な思いを受け止めた。

ブンセンが選んだのは、再建の枠組みを事業譲渡とする方法だった。新会社を設立し、野村佃煮の事業のみを承継する。過去の債務は切り離し、暖簾(のれん)と技術、そして雇用を守る形を選んだ。

財務や事業、雇用の維持を精査し、支援金を算出。ブンセンはスポンサーとして正式に名乗りを挙げた。そして3月13日、事業譲渡契約を締結する。

ブンセンの進物用佃煮「茶良」
ブンセンの進物用佃煮「茶良」。製造はブンセンだが、販売他は事業ごとに分社化している(写真:筆者撮影)
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