「知能検査」は子どもを伸ばすためにどう活用すべき?「検査の原点」と「人を排除する道具と化したIQの歴史」に学ぶべき視点

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IQ(知能指数)の数値を上げたいと考える親御さんもいるでしょう。確かに知能検査を繰り返すと、その項目の成績はよくなります。

知能検査を作成するときには、その項目が適切かどうか、予備調査を行って慎重に決定していますが、項目を知っていると準備することができるので、正答が増えることでしょう。また、同じ検査項目を何度も行えば、慣れてくるので正答数が増えることは容易に想像できます。

知能検査に限らず、同じ問題を何度も解いたら、その結果は向上します。知能検査の場合はその結果をIQという数値で表すので、IQが高くなるでしょう。ただし、それは知能検査の本来の用途からはずれてしまっています。

さらに、IQの向上に価値を見出す人は、IQが低い人に価値を見出さない人かもしれません。IQにより人々が差別的に扱われてきた歴史に学ぶなら、IQの向上を目標にすることは危険です。

「環境」や「努力」で知能は変化する

では、賢さは生涯不変なのでしょうか。知能は変わらないのでしょうか。そうではありません。生まれてからの環境や本人の努力によって知能は変化します。知能に限らず「人間の能力は生まれつきなのか」「育ち方なのか」は人々の大きな関心を呼び続けています。心理学者の多くは、生まれつきよりも育ち方だという考え方を持っていますし、それを推進するような研究や実践を続けてきました。

20世紀初頭に活躍したアメリカの教育心理学者・ソーンダイクは、「存在するものは何らかの総量として存在している。それを完全に知るには、質だけでなく量も知る必要がある」と述べました。

それまでの長い間、「頭がいい」「賢い」という評価は質的なもので、グラデーションのない判断(頭がいいか悪いかの二分法)でした。それに対してソーンダイクは、知能を量的に捉えることの重要性を主張したのです。測定至上主義のように解釈されて傲慢だと批判されることもありますが、再現可能な手続きで測定するという科学的アプローチの基礎となりました。

実際、ソーンダイクは知能を質ではなく量として捉えることで、努力によって向上する可能性を示しました。彼が考案したドリル学習は、繰り返し練習することで賢さが量的に向上するという考えに基づいています。

心理学系の研究者(あるいは頭がよいとされる人)は、ドリル学習のような反復トレーニングに批判的な人も多いようですが、その批判には少し誤解が入っているように思います(ただし、知能検査の反復によるIQの上昇を喜ぶことが問題なのは先ほど述べた通りです)。

反復トレーニングに対しては、やる気や動機のほうが重要で、反復を強いるのは問題ではないのかといった批判もあるように思います。また、ドリル学習に馴染めない障害のあるお子さんもいることでしょう。そもそも、学び方には1つの正解(王道)というものはなく、「複線径路」なのだと考えることが必要ではないでしょうか。

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