「知能検査」は子どもを伸ばすためにどう活用すべき?「検査の原点」と「人を排除する道具と化したIQの歴史」に学ぶべき視点

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

その後、ビネの検査を基に、IQ(Intelligence Quotient:知能指数)という数値が、ドイツの心理学者・シュテルンによって考案されました。

当初の計算方法は、テストで示された精神年齢を実年齢で割り、100を掛けるというものでした。5歳の子が3歳水準のことしかできなければ、「(3歳÷5歳)×100=60」となります。これが「比率IQ」です。このIQによって、「子どもがその年齢相応か」「遅れているか進んでいるか」を捉えやすくなったのは事実です。

しかし、この方法にはいくつか問題がありました。まず、割り算によって歳という単位が消えてしまい抽象的な知能を把握しているかのように見えてしまったことです。次に、年齢が上がるにつれて、年齢の差が表すものが小さくなっていくという問題です。11歳と12歳になれば1年という年齢の差はそれほど大きくありません。21歳と22歳になればその相対的な差は小さいものとなります。

「人を育てる道具」から「人を排除する道具」へ

そこで、同年齢集団の中での相対的な位置を示す必要が生じて、「偏差IQ」が採用されるようになりました。平均を100とし、それより優れていれば数値が大きく、劣っていれば小さくなる仕組みです。これは学校の偏差値に近い考え方です。

先ほど絶対的水準と相対的水準の話をしましたが、偏差IQの登場により知能指数は集団の中の位置を示す指標になりました。いわゆる偏差値が平均を50に設定した数値であり数字がどんどん大きくなったりしないように、IQも100が標準であるように設定され、無限に大きくなったりはしません(IQ=1300などということはありえないのです)。

さらに、知能検査の性質を大きく変えることが起きました。20世紀初頭の第1次世界大戦のときです。アメリカにおいて、大量の兵士が必要となり徴兵するときに、その知的能力を一斉に把握して配置の参考にしたのです。1人ひとりを丁寧に見ることはできないため、集団実施を行いやすいアンケート形式の知能検査が作成されました。

また、アメリカでは増えつつある移民に対して集団式の知能検査を行い、劣った人たちを入国させないという使い方をしました。ここにおいて知能検査は人を育てる道具から人を排除する道具へと変質しました。

こうした歴史を踏まえ、教育においては知能検査をどう扱うべきでしょうか。

知能検査は、その人の知的側面を捉えるための道具です。また知能指数は、同年齢集団の中での相対的位置を示す数値にすぎません。この理解が重要です。

次ページ知能は上げられるのか?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事